世界から集う生徒に育む変革の志 全寮制校ISAKの力全寮制私立高校、UWC ISAKジャパンの小林りん代表理事に聞く

多様性に富む社会への適応力を身につけるのは、日本人生徒に限った課題ではないが、世界で通用する日本人を育ててほしいとの期待は高い。同校の支援者に、元ソニー社長の出井伸之氏など著名な経営者や企業が名を連ねるのもその表れだ。さらに同校の運営資金として「非常に大きい」(小林氏)のが、全国から同校への寄付を指定して軽井沢町に寄せられる「ふるさと納税」だ。今年度予算約10億円の3割は、同制度などを利用した寄付で賄われているという。

「御三家」をやめて来る生徒も

同校の1年生の定員は40人。うち約3割が日本人だが、2年目にUWCが選抜した留学生40人が編入学してくるため、上級になると日本人の比率は15%程度に下がる。入学時の競争倍率は、今秋スタートする18年度の場合、全体で5倍。日本人に限れば7倍程度と、なかなかの狭き門だ。

2年生の白井文菜さんは都立の中高一貫校に通っていたが、「詰め込み型の授業が、自分が生きていく上で本当の学びとなるのか」という疑問を抱き、ISAKへの進学を決めた。入学試験ではエッセーや面接を通じて自分の考え方が問われる。「試験に備える中で、自分は何をしたいのか真剣に自問自答しました。そのために膨大な量のノートやメモを作った。受験のプロセス自体が、自分が大きく成長する機会でした」と話す。

特に印象深い授業としてリーダーシップの授業を挙げ、「何かを成し遂げるためには、そのために必要なスキルがあり、そのスキルを身につけることが、目標達成や自分の可能性拡大につながることを学びました」と話す。また、歴史の授業では「様々な国の人たちとの議論を通じ、相反する価値観が衝突したときに、どこまで自分の価値観を押し通すべきか、どういった行動をとるべきかを考えさせられました」という。「この2年間で自分は大きく変わったと感じます」と白井さんは振り返る。

小林氏によれば、同校に入学する生徒の中には「男子御三家」をやめてくる人も毎年のようにいる。「みんな問題意識の高い生徒ばかりです」(小林氏)という。

卒業生の大半は欧米の大学に進み、米国のアイビーリーグや英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクスなどトップ校に入る生徒もいる。その一方で、「ギャップイヤー」をとる卒業生が1割ほどいるのも特徴だ。ギャップイヤーとは、大学に入る前にいったん就職したりボランティア活動をしたりして、見聞を広げ、大学で勉強したいことを見つける猶予期間のことで、欧米では珍しくない。「今年の卒業生の中には、起業経験をしてみたいと言って実際にチームで起業した日本人生徒もいます」(小林氏)

学校自身も「変わり続ける」

UWCの知名度は日本では低いが、日本人の卒業生は少なくない。小林氏以外にも、宇宙飛行士の星出彰彦氏や、盛田昭夫氏の次男でソニー・ミュージックエンタテインメント社長を務めた盛田昌夫氏らがいる。卒業生同士の交流も盛んだ。

カナダのUWCを卒業し、現在は米ニューヨーク大学に通う小杉山浩太朗さんは、人材サービス大手のアデコグループが世界47カ国で毎年実施しているインターンシッププログラム「1カ月間のCEO」に応募。日本人応募者7000人の中から選ばれ、この6月に日本のアデコで1カ月間勤務した。社内組織をフル活用してダイバーシティー推進のためのアクション計画を作成したという。

小杉山さんは早稲田実業学校中等部を首席で卒業して同高等部に入ったが、やはり日本の教育に疑問を感じて高校1年で中退し、カナダのUWCに編入学した。「UWCでは紛争地域からの留学生と一緒に学ぶなどして、世界の現実や実情を肌で知ることができました」とUWCのカリキュラムを評価する。

今秋、開校5年目を迎えるUWC ISAKジャパン。これまでの歩みは順調だが、小林氏は「順調であるほど現状に安住しがち」と気を引き締める。そこで重視するのが、変化・進化を続けるDNAを根付かせる組織づくりだ。例えば、生徒の成長、チャレンジを後押しできるモチベーションの高い教員を確保する人事考課の仕組みなどを考えているという。

「ミッションを達成するためには、学校自身もチェンジメーカーであり続ける必要がある」。小林氏はそう強調する。

(ライター 猪瀬聖)

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