わが子の進路「損得勘定」 理系と文系どちらがいい?

日経DUAL

体育会は有利。だが、わが子を上に従順な労働者にしてもいい?

あと一つのデータをお見せして、おしまいにしましょう。大学時代の運動部の活動(いわゆる体育会)を経験することで年収が上がるかです。大企業は体育会系の学生を好んで採用するといいます。スポーツで鍛え上げた身体や忍耐力、チームの一員として協調する力が評価されるそうですが、条件を制御した比較をしても、体育会経験者の年収はそうでない人よりも高いのか。

25~54歳の大卒男性を取り出し、大学時代の運動部の加入状況と現在の年収をクロスさせてみます。図2は、加入群と非加入群の年収分布を帯グラフで表したものです。

運動部加入者は238人、非加入者は610人で、分析対象のサンプルの運動部経験率は3割ほどです(結構いるのですね)。両群の年収分布をみると、同じ働き盛りの大卒男性でも、体育会経験者の年収のほうが高くなっています。統計的に有意です。

これをもって、子どもには運動部を経験させたほうがいい、という向きに傾くかもしれませんが、私はそういう気にはなれません。日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル事件を思うとなおのこと。好まれるのは、上の命令を従順(盲目的)に聞き入れる労働者で、そういうメンタルを持った人が早く出世する。こういう(体育会の)カルチャーが、日本の企業にはびこっている。このグラフは、それを暗示しているように思うのです。

どの専攻でも、自分の頭で考え、発信できる子どもに育てることが重要

阿漕(あこぎ)なことをして崩壊に追いやられる組織も少なくありませんが、それと運命を共にする愚は避けたいもの。エッセイストの小島慶子氏が先日のコラムで、「特等席に揺られていくドナドナ人生のチケットよりも、地獄行きの列車から飛び降りて原野を駆けゆく脚力を」、と言われていますが、全くその通りだと思います。

安定の道をお子さんに進ませたいのが親心でしょうが、それだけでは足りない。理不尽なことに遭遇したら、そこから離れて自分で生きる力も鍛えないといけない。変化が激しく、大企業とて安泰を保証されぬ時代にあっては、こちらのほうが重要となります。昨年公示の新学習指導要領のキーワードは「生きる力」です。

「ネットで自分を発信する力」は、これに含まれると思います。自分で起業し、仕事を得るためのツールになるのですから。日本では目下、この面の力を鍛えている子どもはごくわずかです。早いうちから、こういう力もつけさせたいものです。

長くなりましたが、どういうことをすれば将来のベネフィット(成功)につながるか、という問いに関するデータを示してみました。とはいえ、最も重視すべきはお子さんの意向です。ベネフィットとは何かを、カネ勘定だけで論じることはできないのですから。

舞田敏彦
教育社会学者。1976年生まれ。東京学芸大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。専攻は教育社会学、社会病理学、社会統計学。著書に『教育の使命と実態』(武蔵野大学出版会)、『教職教養らくらくマスター』(実務教育出版)、『データで読む 教育の論点』(晶文社)など。

[日経DUAL 2018年6月21日付記事を再構成]

注目記事