検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

わが子の進路「損得勘定」 理系と文系どちらがいい?

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

日経DUAL

わが子に理系、文系のどちらを勧めますか? 文系・理系で将来どのくらい年収に差がつくのか、専攻や大学院へ行く・行かないによって就職率がどのように変わるのかを、教育社会学者の舞田敏彦先生がはじき出しました。将来わが子をどのような道に進ませようか模索中のママ・パパたちは必読です。就職に有利といわれる運動部に入ることについての考察も参考にしてください。

◇  ◇  ◇

専門教育を選ぶとき「稼げるかどうか」も気になるポイント

皆さんは、お子さんに公教育(学校教育)を受けさせているわけですが、教えられる内容は発達段階によって異なります。早い段階では、読み・書き・算をはじめとした、全国民に共通して求められる基本的な知識・技術を学び、年齢が上がるにつれ、自身の意向や適性に応じて特定の領域を深めていきます。前者は普通教育(共通教育)、後者は専門教育です。

この2つは教育を支える両輪で、どちらが欠けてもいけません。各人の間に十分な「同質性」がないと社会は成り立ちませんが、金太郎飴のごとく、似た者どうしばかりでもいけない。現代の高度化した社会を動かすには、各人の持ち味を生かした分業が不可欠です。つまり「多様性」も求められるのであり、それを担保するのが専門教育です。

日本の制度のくくりでいうと、初等・前期中等教育(小・中学校)までは普通教育で、後期中等教育(高校)では普通教育と専門教育が混ざり合い、高等教育(大学等)になると専門教育の比重が高くなります。15歳の高校入学時に普通高校と専門高校(昔でいう職業高校)に分化し、前者では2年生あたりから文系と理系に分かれ、履修する教科の重みづけをし、それぞれの枠に適した大学の学部(専攻)に進む、という具合です。

読者のお子さんもやがてはこの分岐点に達し、選択を迫られることになります。別に大げさに考える必要はなく、まずは当人の意向を尊重し、適性や能力といった条件を織り合わせて決めればいいだけのこと。しかるに、考慮すべき現実要素の中には「将来における成功可能性」もあり、多くの親御さんがこの点を気にしています。

「どの専攻に行けば稼げるか?」。品のいい問いではありませんが、これに答えるデータを作ってみましたのでご覧に入れましょう。

文系・理系の年収比較。女子に大きな差が見られた

経済協力開発機構(OECD)の国際成人力調査「PIAAC 2012」では、最後に出た学校での専攻分野(major)を尋ねています。日本の大卒男女(25~54歳)のサンプルを取り出し、大学時代の専攻に依拠して文系群と理系群に仕分けし、現在の年収とのクロスをとってみました。年収は国内の就業者全体の分布に基づく相対区分で、原統計では6つの階層が設けられていますが、ここでは3つに簡略化しました(下位25%未満、中間、上位25%以上)。

図1は、結果をグラフで表したものです。横幅を使って、文系群と理系群の人数比も表現しています。

ぱっと見、年収の性差が大きいことに気づきます。男性では「上位25%以上」が多くを占めますが、女性は「下位25%未満」が結構います。同じ大学・大学院卒でです。女性の場合、家計補助のパート就業が多いと思われますが、この格差は大きい。

ここでの関心事である文系・理系の差をみると、大学時代に理系を専攻した者のほうが、文系専攻者より年収が高くなっています。女性はそれが明瞭で、「上位25%以上」の割合は、文系は19.3%であるのに対し、理系では40.8%にもなります。「下位25%未満」のプアの比重は、これの裏返しです。理系の女性は既婚者が少ないのではないか、と言われるかもしれせんが、文系群と理系群の既婚率に大きな差はありません。

最近では「リケジョ」が重宝されるといいますが、女子の場合、理系に進むことのベネフィットが大きいといえるかもしれません。しかしながら、そういう女子は少ないのが現状。グラフの横幅を見ても、女性では文理の人数比が「3:1」になっています(男性はほぼ半々)。

日本の女子生徒の理系職志望率は低いのですが、「女子なのに理系なんて……」という周囲の偏見が寄与していることが少なくありません。それがいかに馬鹿げたこと、もったいないことであるかは、図1のグラフを見ると分かるかと思います。個人の稼ぎがどうかというカネ勘定の話だけではなく、女子の理系で開花したかもしれない才能が摘まれることは、社会にとってもマイナスです。

正社員になるには理系なら院卒、文系なら学部卒のほうが有利

大雑把な文系・理系というくくりで、将来見込まれる稼ぎの比較をしましたが、この2つの下にはより細かい専攻が含まれています。文系は人文科学、社会科学……、理系は理学、工学……というように。こういう具体的な専攻ごとのベネフィットも知りたいですね。

大卒者の細かな専攻ごとの年収を出すことはできませんが、正社員就職率という指標を計算することはできます。正社員になれるチャンスが高いのはどの専攻か。肌感覚では、文系より理系が優勢で、後者の中でも理学や工学などが強そうですが、データで見るとどうでしょう。

文科省の『学校基本調査』では、大卒者の進路を専攻別に集計した表があります。設けられている専攻区分は、人文科学、社会科学、理学、工学、農学、保健、商船、家政、教育、芸術、その他、です。このうちの商船は、卒業生が少ないので除きます。

正社員就職率の分母には、就職の意志のない進学者を卒業生から除いた数を充てます。分子は、正規就職者と臨床研修医です。医学部の場合、キャリアが臨床研修医から始まることが多いので、この数も含ませましょう。なお最近は大学院修士課程への進学者も増えていますので、学部卒業と大学院修士課程修了の2時点を織りまぜることにします。

学部の10専攻、修士課程の10専攻を、正社員就職率が高い順に配列すると、表1のようになります。Aは大学学部、Bは大学院修士課程です。

まず男子を見ると、下馬評通り理系が強いですね。学部(A)よりも大学院(B)が強し。理系、とりわけ大企業では、学部卒業生よりも修士課程修了者が好んで採用されるといいますが、それが表れています。

しかし文系は違うようで、男子の社会科学(法学部、経済学部など)の正社員就職率は、学部では85.5%ですが、大学院では74.0%に下がります。人文科学(文学部など)は陥落がもっと大きく、76.8%から51.2%に下がってしまいます。

文系の場合、大学院でプラス2年間学んだことの効果も説明しにくいですからね。学部段階での新卒就職に失敗したとか、まだ学生でいたいとか、生半可な気持ちで院に行く学生も多いですし。それが悪いとは言いませんが、お子さんがこういう方向に傾いた時、上記のような数字を出して、リスクを説明しないといけないかもしれません。

「女子の文系・院卒」不利は古い差別感の現れ?

次に女子を見ると、5つの専攻で正社員就職率が9割を超えています。トップは学部の保健専攻で91.5%です。多くは看護学部の卒業生と思われます。看護師への需要が高まっていますからね。農学部も健闘。リケジョならぬ「ノケジョ(農業女子)」が増えているそうですが、農林漁業の6次産業化(加工、流通販売の機能も付加)に際して、女性ならではの視点が評価されるのかもしれません。

文系では、大学院を出るとデメリットが発生するのは男子と同じです。女子の場合、就職率の下落幅が男子よりも大きく、社会科学は88.7%から59.1%、人文科学に至っては83.3%から45.0%とほぼ半減してしまいます。文系の院卒への風当たりは強いのですが、男子よりも女子でそれは顕著です。「学のある女性はいらぬ」。採用担当者の脳内には、まだこういう構図があるのでしょうか。大学院修了者の秘めた能力を汲もうとしない、企業の側の問題でもあると思います。

体育会は有利。だが、わが子を上に従順な労働者にしてもいい?

あと一つのデータをお見せして、おしまいにしましょう。大学時代の運動部の活動(いわゆる体育会)を経験することで年収が上がるかです。大企業は体育会系の学生を好んで採用するといいます。スポーツで鍛え上げた身体や忍耐力、チームの一員として協調する力が評価されるそうですが、条件を制御した比較をしても、体育会経験者の年収はそうでない人よりも高いのか。

25~54歳の大卒男性を取り出し、大学時代の運動部の加入状況と現在の年収をクロスさせてみます。図2は、加入群と非加入群の年収分布を帯グラフで表したものです。

運動部加入者は238人、非加入者は610人で、分析対象のサンプルの運動部経験率は3割ほどです(結構いるのですね)。両群の年収分布をみると、同じ働き盛りの大卒男性でも、体育会経験者の年収のほうが高くなっています。統計的に有意です。

これをもって、子どもには運動部を経験させたほうがいい、という向きに傾くかもしれませんが、私はそういう気にはなれません。日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル事件を思うとなおのこと。好まれるのは、上の命令を従順(盲目的)に聞き入れる労働者で、そういうメンタルを持った人が早く出世する。こういう(体育会の)カルチャーが、日本の企業にはびこっている。このグラフは、それを暗示しているように思うのです。

どの専攻でも、自分の頭で考え、発信できる子どもに育てることが重要

阿漕(あこぎ)なことをして崩壊に追いやられる組織も少なくありませんが、それと運命を共にする愚は避けたいもの。エッセイストの小島慶子氏が先日のコラムで、「特等席に揺られていくドナドナ人生のチケットよりも、地獄行きの列車から飛び降りて原野を駆けゆく脚力を」、と言われていますが、全くその通りだと思います。

安定の道をお子さんに進ませたいのが親心でしょうが、それだけでは足りない。理不尽なことに遭遇したら、そこから離れて自分で生きる力も鍛えないといけない。変化が激しく、大企業とて安泰を保証されぬ時代にあっては、こちらのほうが重要となります。昨年公示の新学習指導要領のキーワードは「生きる力」です。

「ネットで自分を発信する力」は、これに含まれると思います。自分で起業し、仕事を得るためのツールになるのですから。日本では目下、この面の力を鍛えている子どもはごくわずかです。早いうちから、こういう力もつけさせたいものです。

長くなりましたが、どういうことをすれば将来のベネフィット(成功)につながるか、という問いに関するデータを示してみました。とはいえ、最も重視すべきはお子さんの意向です。ベネフィットとは何かを、カネ勘定だけで論じることはできないのですから。

舞田敏彦
 教育社会学者。1976年生まれ。東京学芸大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。専攻は教育社会学、社会病理学、社会統計学。著書に『教育の使命と実態』(武蔵野大学出版会)、『教職教養らくらくマスター』(実務教育出版)、『データで読む 教育の論点』(晶文社)など。

[日経DUAL 2018年6月21日付記事を再構成]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_