尻も股下もそりやすい 男性用トリマーが意外なヒット
パナソニックが開発した男性向けの「ボディートリマー」の売れ行きが好調だ。2017年5月に発売して以来、国内では1年間で当初計画の2倍の売れ行きを示したという。18年5月には第2弾の商品を発売しており、体毛を処理したい男性向けのグルーミング市場をさらに開拓していく構えだ。
ボディートリマーとはパナソニックによる造語。トリマーという言葉は、余分な部分をカットする「トリミング」に由来しており、ボディートリマーは全身の毛を刈りそろえる道具という意味になる。これまでもシェーバーとトリマーの機能を一体にした「ボディーシェーバー」製品はあった。しかし刃先と握り部分がシェーバーのように「T字型」になっており、尻回りや股下部分など複雑な形状では難があった。他社製品もほとんどが同様だ。
そこで今回は、刃先と握り部分が「I字型」になるようにデザインを見直した。本体を横にして肌をなでるように動かすことで、肌の平面部分だけでなく、複雑な部分でも処理しやすくなったという。自分では見えにくい尻回りでも、刃先が届きやすい。さらに付属のアタッチメントを刃先に装着することで、深ぞりを防止するほか、体毛の長さを調整してカットすることもできる。
「男性の美容意識が次第に高まってきており、体毛などを自分で処理するメンズグルーミング市場が拡大している。しかし、どうやっていいか分からない、一般のシェービングでは不安があるといった声も上がっている。そうした人に向けて、安心で手軽に使える商品を開発しようと考えた」(パナソニック アプライアンス社ビューティ・リビング事業部 商品企画部・パーソナル商品企画課の米田共余氏)
欧州向けに企画し現地でヒアリング
この製品はもともと、欧州(主にドイツ)の男性向けに開発を始めたものだった。現地調査の結果、5割の男性が体毛を処理し、そのうち9割が股下部分までそっていた。他社にも股下部分まで狙った商品がなかったので、ビジネスチャンスがあると判断した。開発チームは商品化の前に、まずは実際にドイツのユーザーを訪問し、どのように生活しているか、どうやって体毛を処理しているか、困っている点は何か、どうすれば満足度を得られるかなどをヒアリング。合計で約10人に会ったという。
開発チームは、ユーザーが体毛の処理に使っている剃刀やボディーシェーバーをはじめ、さまざまな機器を実際に試してみた。そのとき、パナソニックの産毛処理用シェーバー「フェリエ」を利用したところ、使い勝手がいいことが分かった。刃先と握り部分が「I字型」になっていたので、これを応用できないかと発想が広がったという。
ただ、産毛と体毛では太さが異なるし、ユーザーも安全性を第一に求めていた。そこで安全に処理できる刃先とはどういうものかを追究。丸みを帯びて幅広い、新しい形状の刃先を作った。開発チームが実際に使い、何度も試作を繰り返して完成させた。
試作品が出来上がると、ドイツのユーザーに見せて感想を聞いた。そうした意見を再度、試作品に反映。商品化のめどがついたところで、ドイツでの調査を終えた。最終段階では、実用性を評価してもらうため、日本に住む外国人にも使用してもらった。全員が問題ないと判断したため、欧州で商品化に踏み切った。
日本市場でも受け入れられる
一方、日本でもニーズを調査したところ、20代や30代の若い男性を中心に、体毛を処理したいという意見が多かった。特に脇部分よりも股下部分に対するニーズが高かったため、日本でも発売を決定した。ただ、欧州と日本では細かいニーズが異なることも分かった。体毛をそり上げる状態より、処理していないように見せる方を日本人は好むという。そこで、好みの長さに処理できるよう、3mmと6mmのアタッチメントを付属させることにした。欧州でもアタッチメントと一緒に販売しているが、主に日本市場に向けた施策だった。
実際、17年5月に第1弾を発売後、別のアタッチメントも欲しいという声が多かったので、18年5月に第2弾を発売したときは、新たに9mmのアタッチメントを用意した。さらに日本では当初に狙っていた若い世代に加え、今までの不満を解消できる新しい商品として、40代以上の世代にも受け入れられていることも分かった。欧州でもカミソリやボディーシェーバーに代わる商品として注目されたという。
(日経クロストレンド 大山繁樹)
[日経クロストレンド 2018年7月13日の記事を再構成]
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