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睡眠不足が熱中症リスク高める 昼寝では改善せず

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/7/31

ナショナルジオグラフィック日本版

写真はイメージ=PIXTA

連日猛暑が続いている。テレビや雑誌では暑さ対策の記事が目白押しだ。厚生労働省のデータによると、2010年には史上最多の1731人が熱中症で亡くなっている。この年の夏は日本全土を猛暑が襲い、同年8月は「観測史上最も暑い1カ月」と呼ばれた。2018年はこの2010年に匹敵するような猛暑が危惧されると気象予報士が話しているのを聞いてヒヤリとした。今回は、睡眠不足と熱中症の関係について書いてみたい。

最近の猛暑関連の記事の中で目にとまったのは「睡眠不足が熱中症のリスクになる」という話題だ。一般の人にとっては当たり前に見える記事かもしれないが、個人的には睡眠不足と熱中症に関連があるという論文や専門書を読んだ記憶が無かった。さっそく調べてみると、数は少ないがこの方面の研究成果が幾つかあることが分かった。

その内容を紹介する前に「熱中症」について簡単に解説しておく。

■臓器不全をもたらす怖い病気、30℃以上で急増

熱中症とは、暑い環境に体が順応できず、脱水や深部体温(脳や内臓の温度)の上昇によって生じる心身の異常全般をさす。めまい、頭痛、吐き気、倦怠(けんたい)感などで始まり、ひどい発汗(逆に汗が出なくなることもある)や頻脈が出現する。症状が強いと筋肉の痛みやけいれん、失神、意識障害に陥る。重症になると内臓への血液循環が悪くなり臓器不全が起こり死に至ることもある怖い病気なのだ。

以前は「日射病」という言葉もよく使われていたが、これは直射日光を浴びてなる熱中症のことである。ただ、屋内屋外を問わず高温や多湿が原因となって熱中症になることがあるため、この呼び名を使うことは少なくなった。湿度が高いと25℃程度の室温でも熱中症が起こることがあり、30℃を超えると患者が急増する。

熱中症は幼児や高齢者で起こりやすいことはよく知られているが、冒頭で紹介したように睡眠不足や質の悪い睡眠(不眠)もリスクを高めると記載してある文献が確かにある。ところが、幾つかの総説に目を通してみても、しっかりと実証した研究は数えるほどしかなかった。

なにせ、調査研究の対象は心身に大きなダメージを与えかねない熱中症である。睡眠不足や不眠のある人を、熱中症を本当に生じかねない熱暑環境にさらすような危険な実験は倫理的に許されない。おのずと研究方法には制約がある。また、睡眠状態の視点から熱中症の発症リスクを検討したしっかりとした疫学調査も行われていないようだ。

では、なぜ「睡眠不足が熱中症のリスクになる」という記事が出回っているのだろうか? 調べてみてもその出典を明記している記事は見つからなかったが、私が調べた論文の中では独立行政法人労働安全衛生総合研究所による試験結果がもっとも説得力があった。

■7-8時間睡眠と4時間睡眠時のウオーキングで比較

その研究では、健康な被験者(平均年齢34歳)を募り、7~8時間眠った翌日と、4時間しか眠らなかった翌日に、熱暑条件(室温35℃、湿度40%)で午前2回、午後2回の計4回にわたって各40分間のウオーキング(時速3.5km)をさせた。ウオーキングの合間には、20分間の休憩(室温28℃、湿度30%)や昼食、昼寝(20分)などをとらせ、水分も自由に飲ませた。

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