週末レシピ 焼き肉のたれを手作り 本気の夏BBQ
夏のアウトドアの楽しみといえばバーベキューだ。海や川、あるいは自宅の庭で、家族や友人たちとビールを飲みながら肉を焼いて食べるのは至福のひとときである。バーベキューは国や家庭によっていろいろなスタイルがあり、スペアリブや塊肉を焼くこともあろうが、日本ではもっぱら焼き肉用の肉を炭火で焼き、たれにつけて食べるのが一般的ではないだろうか。そのたれを市販品ではなく手作りしようというのが今日のお題だ。
普段料理しない人でも家に調理器具があまりない人でもできるので、調理器具の充実度別に作り方を紹介する。
【自家製焼き肉のたれ】
<材料> (つくりやすい分量)
しょうゆ 2カップ / みりん 1カップ / ニンニク 2~3片 / ショウガ 2~3片 / タマネギ 半分 / リンゴまたはナシ 小さめ1個 / ゴマ油 大さじ3杯 / 煎りゴマ 適宜
<作り方>
・ミキサーやブレンダーをお持ちの方
(1)タマネギとリンゴ(またはナシ)とショウガは皮をむき、1口大の大きさに切る。ニンニクも皮をむく
(2)ゴマ油と煎りゴマ以外の材料をすべてミキサーに入れてスイッチオン
(3)ゴマ油と煎りゴマを加えて、できあがり
・ミキサーやブレンダーはないが、おろし金ならあるという方
(1)ボウルにニンニク・ショウガ・タマネギ・リンゴ(またはナシ)をおろし金ですりおろす。タマネギをすりおろすのは目が痛くなって大変だが、入れたほうがうまい。タマネギを省略したい人は果物を多めに入れて
(2)しょうゆとみりん、ゴマ油、煎りゴマを加え、よくかき混ぜてできあがり
・おろし金もボウルもない、包丁すらないという方
(1)上記材料のうち、ニンニクとショウガはチューブ状のものを購入。リンゴはすりおろし状のジャムか離乳食の瓶で代用する。タマネギは省略
(2)空のペットボトルにしょうゆとみりんを入れ、ニンニクとショウガはチューブ半分ほどを入れる。リンゴは甘さを味見して加減しながら加える。ゴマ油、煎りゴマを加えてよく振ってできあがり
なんのことはない、材料をただ混ぜるだけである。その気になれば包丁さえ使わずにできる簡単調理だ。そもそも包丁も持っていない人は最初から市販の焼き肉のたれを買う気もするのだが、それでも私が手作りをお薦めする理由は2つある。
一つは超簡単なワリにはインパクトがあるから。ここ数年、我が家のバーベキューでは焼き肉のたれを手作りしている。「自家製です」と言ってお出しすると、ゲストはたいてい「えー! これって自分で作れるんだ!?」と驚く。そして、一口食べては「買うのと同じ味!いや、それよりウマいかも!」と感激してくれるのだ。
ちょっと話はずれるようだが、我が家はカレーに添える「福神漬け」を作ることもある。こちらもゲストにお出しすると、思いのほか感激してもらえる。焼き肉のたれも福神漬けも「これは買うもの」という先入観があるようで、そういうものを手作りすると、どうやらサプライズ感があるらしい。また、主役よりも脇役に凝ることによって「こんな細部にまで手間ひまをかけてくれてるんだ!」と思ってもらえ、「おもてなし感」が出るようである。
もう一つ手作りをお薦めする理由は、味を好みにアレンジできるから。上記はもっとも手間なく、子どもの口にも合うレシピだが、大人だけのバーベキューパーテイーならば最後に一味トウガラシをプラスするのもいいだろう。子どもがいる場合は、一味トウガラシを別容器で用意して、たれを銘々皿に注いだ後、辛いのがOKな人だけトウガラシを加えてもらうスタイルで出すとよい。
サッパリとした味が好みならお酢をちょっと加えるのもおいしい。また、最近は空前の「肉ブーム」だそうで、ゲストがちょっとお高いブランド牛肉を持ってきてくれるかもしれない。そんなときには、みりんの代わりに赤ワインを加えるとちょっと高級なたれになる。なお、子どもも食べる場合はアルコールを煮切ってから使おう。
焼き肉のたれの用途は焼き肉だけではない。私の友人は夫の海外駐在に必ず市販の焼き肉のたれを持って行くと言っていた。それは彼女の家でよく焼き肉をするからではなく、万能調味料として使っているのだとか。たれにはいろいろな香味野菜や果物が入っているので、いつもの料理にちょっと加えただけでもコクや複雑さが増す。また、元来の使い方であるバーベキューソースとして出しても外国人にウケる味らしく、非常に便利とのこと。
手作りのたれも市販のたれも「焼き肉に使うもの」という思い込みは捨てて、どんどんほかの料理にも使おうではないか。手始めに作ってみていただきたいのはドレッシング。とても簡単でおいしい。
【焼き肉のたれドレッシング】
<材料(2人前)>
焼き肉のたれ 大さじ2 / 酢 大さじ1 / ごま油 大さじ1
<作り方>
(1)材料をすべて混ぜるだけ
ボウルに入れて混ぜてもいいが、私は洗い物をひとつ減らすために、サラダに直接焼き肉のたれと酢と油をかけている。ドレッシングにはニンニクやタマネギのすりおろしが入っていることが多い。焼き肉のたれにはこうしたものがはじめから入っているので、わざわざドレッシングのためにすりおろさなくてもいいのが便利。
鶏肉や豆腐、海藻などのサラダによく合う。このドレッシングをかけるだけでガッツリ味になって、満足感がある。
肉だけでなく魚に合わせてもウマい。たとえば、「マグロのユッケ風」。
【マグロのユッケ風】
<材料(2人前)>
マグロ 200グラム / 焼き肉のたれ 大さじ2 / コチュジャン 小さじ1 / しょうゆ大さじ1/2 / ゴマ油 大さじ1/2 / 卵 1個 / シソ・ワケギ 適宜
<作り方>
(1)マグロを食べやすい大きさに切る
(2)ボウルに焼き肉のたれ、コチュジャン、しょうゆ、ゴマ油を入れてよく混ぜ、マグロを加えてあえる
(3)皿にシソを敷き、その上にマグロを盛り付け、真ん中にくぼみをつける
(4)くぼみに卵黄を乗せて、ワケギの小口切りを散らしたらできあがり
ユッケは本来、牛の生肉を使った韓国料理。しかし、牛肉の生肉の提供が禁止されてから日本では食べられなくなってしまった。このユッケは牛肉の代わりにマグロを使ったものだが、どこか肉をほうふつさせる味。焼き肉のたれの味や香りによって頭の中の「牛肉の味や食感」の記憶が勝手に引き出されるからだろうか。高級なトロではなく、むしろ安い赤身のほうが本来のユッケらしい味わいになる。
ほかにも中華料理全般、そしてカレーにも使える。今週バーベキューの予定がある人もない人もぜひとも自家製たれにトライしていただきたい。これって手作りできるんだという驚きとともに、そのおいしさと汎用性にきっと気づくはずだ。市販のたれが冷蔵庫に眠っている人は「使い切り」にチャレンジしてみて。
(ライター 柏木珠希)
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