ライフスタイルの変化や職人の後継者不足問題などによって、地方の伝統工芸品は苦しい状況に置かれている。だが、新しい魅力を加えながら、消費者のニーズに応えようとするメーカーが、次々とヒット商品を生み出している。今回はそんな7製品を紹介する。
【栃木県】機能付き二重蓋で土鍋ご飯が手軽に
変化を恐れず、新たなチャレンジに積極的な老舗メーカーの代表例が、「kamacco」を販売する栃木県のつかもとだ。伝統色の強い益子焼が現代のライフスタイルと合っていないことに危機感を抱き、15年ほど前から現代の生活になじむデザインの陶器を提案。なかでも、2016年に発売した「kamacco」は、益子焼の素朴さを生かしつつ、二重蓋に茶わんや計量カップの機能を付けることで新たな需要を生んだ。



また、二重蓋の採用で吹きこぼれを防ぎ、細かな火加減の調節なしで手軽に土鍋ご飯を楽しめる。保温性が高く、内蓋をしておけば炊き上がったご飯のおひつとしても重宝し、一人でも無理して食べきる必要がない。同商品で海外進出も視野に入れる。
【新潟県】カレーの具をラクラク切れるスプーン
逆に国内市場の拡大に目を向けたメーカーもある。「カレー賢人」の山崎金属工業だ。新潟県燕市の金属洋食器の質の高さは世界に知られる。同社も欧米百貨店向けの高級金属洋食器販売を主力としていたが、ネット通販などの台頭で市況が変わると、日本人の国民食ともいえる「カレー」専用スプーンのアイデアで、国内向け製品の開発にかじを切った。



担当者の中村雅之氏は市場調査のため、カレーの激戦区神保町に通い詰め、客がスプーンで具材を切る動作や、皿にルウや米粒が残ってしまうという不満に注目。具材を簡単に切ることができ、皿に残ったカレーをすくいやすい形のスプーン「サクー」でカレー愛好家たちのニーズに応えた。
【香川県】今治タオル素材のシャツでインナーいらず
消費者が抱える日常的な不満の解決に注力するメーカーも強い。「三豊肌衣ドレスシャツ」のオギタヘムトは、汗で体にシャツが貼り付くというビジネスマンにとって避けて通れない夏場のワイシャツ問題に着目し、消費者の潜在的なニーズを掘り起こした。


今治タオルの老舗メーカーと協力し、本来ならタオルには使用しない細い糸で新たな素材を開発。吸水性が良く、インナーがいらないシャツが完成した。