狙われるイノベーティブ五輪 サイバー攻防は総力戦迫真・東京五輪2年前(5)

東京五輪の競技・会場関係者と警視庁の捜査員が机上演習を行った(5月、東京都港区)
東京五輪の競技・会場関係者と警視庁の捜査員が机上演習を行った(5月、東京都港区)

「最新の手口を知ることが、最大の対策になる」。5月上旬、東京都港区のNEC本社で2020年東京五輪・パラリンピックの競技会場と各競技団体の情報システム担当者、警視庁の捜査員ら約70人が、専門家とともに「標的型メール」対策などを確認した。多様化・巧妙化する攻撃に対する机上演習だ。

大会まで2年を前に、大会組織委員会や自治体、競技団体などは実戦的なサイバー演習に取り組む。見えない攻撃相手との攻防が始まっているためだ。

ある警察幹部は「大会関係者や競技団体のサイトに不審なメールや通信が送られる事例が既に複数確認されている」と明かす。マルウエア(悪意あるプログラム)には長く潜伏し、特定の時期に発動するものもあり「いったん侵入されれば、気付くのは難しい」という。

世界中の目が注がれる五輪は、テロの標的となるリスクを抱え、選手や観客が狙われた事件も起きている。テロリストの水際防止対策など、国際的な取り組みが進む一方で、近年、警備関係者が神経をとがらせているのは、大会ごとに強度を増しているサイバー攻撃だ。

12年ロンドン大会は開会式で電力供給システムが狙われるなど、期間中のサイバー攻撃は2億件超。18年平昌冬季大会では、チケットのシステムが狙われた。東京大会に対する攻撃は、さらに上をいくとみられる。

関係者の懸念が尽きないのは、東京大会が打ち出す「史上最もイノベーティブな大会」が、セキュリティー分野では未成熟とされるためだ。人工知能(AI)や自動運転、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の活用などの新技術について、元防衛省サイバー防衛隊長で情報セキュリティー大手ラック(東京)の佐藤雅俊(57)は「一般的にセキュリティー基準が未整備で対策が遅れており、格好の標的だ」と指摘する。

組織委は防御網を構築する一方で、「100%安全はない」としてシステムダウンを想定した早期復旧計画も並行して検討している。組織委の最高情報セキュリティ責任者の坂明(60)は「攻撃は非常に巧妙化している。守り切るつもりだが、万が一システムに侵入されても被害を極小化し、大会運営に影響が出ないよう対策を取っていく」と話している。

(敬称略)

加藤宏一、小沢一郎、亀真奈文、工藤正晃、鷹巣有希、鱸正人、渡辺岳史、岩沢明信、堀部遥が担当しました。

[日本経済新聞朝刊2018年7月20日付を再構成]