それは社長が常々従業員に伝えていた、こんな言葉への強い反発でした。

「今多少給与が安くても、しっかりと経験を積んでおけば、ちゃんと給与も増えていくから。それに残業すればそれなりの給与にもなるだろう。さらに40代になれば●百万円の年収も十分に狙える。みんなが嫁さんと子どもをしっかり食わせていけるように私も頑張っている。みんなもしっかり頑張っていこう!」

おそらく50代以上の方は、この社長の言葉にあまり違和感を覚えないでしょう。

しかしその会社の若手は、社長がこういう言葉を口にするたびに嫌気がさしていたと言います。端的な気持ちとして、こんな言葉を若手から聞きました。

「今の給与じゃそもそも結婚できないんですよ。昼飯すら毎日自炊弁当ですから」

「残業して給与を稼げ、って社長が言っちゃいますか」

「今会社にいる40代の先輩や上司たちって、仕事できない人たちが多くないですか。その人たちに●百万円の年収払ってるくらいなら、実際に結果を出している僕たちの給与増やしてくれてもいいと思うんですけどね。あの人たちの嫁さんや子どもの生活費を僕たちが稼ぐっておかしくないですか」

なぜこのような反発が生じるのか、私はもう少し具体的に言葉を続けました。

生活スタイルの変化に気づけない経営者たち

「そもそも『嫁さんと子どもを食わせていく』という発想自体が若者離れを引き起こしている原因だとご理解されていますか?」

そう言って、さまざまな統計データをお見せしました。たとえば結婚年齢が後ろ倒しになっていることとか、出産年齢がさらに後ろ倒しになっていること。さらに、一番多い世帯モデルがすでに独身世帯になっていることや、専業主婦世帯が激減していることなども示しました。それらを踏まえて示した人事に基づく経営課題は次のようなものでした。

・終身雇用を前提とした給与の後払いの仕組みが若者離れを起こしている
・それは「給与の後払い」という考え方が今の生活スタイルに合致していないから
・「給与の後払い」の仕組みを維持する限り、転職できない人か、転職に対して慎重な人が会社に残りやすくなる。それは次のような人材が社内の標準となる可能性を生む。
 転職できない人:技術力やコミュニケーション能力が低い人
 転職に慎重な人:リスクをとってチャレンジすることに対して慎重な人
・つまり「技術力やコミュニケーション能力が低く」「リスクを取ったチャレンジをしない」人たちの集団になる可能性が高い
(実際に、40代以上の社員たちがそういう傾向を持っている、と若手は考えている、というアンケート結果もありました)
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自社の経営者の「常識」で出世の可能性を見極める