ベンツGクラス 違いが見えないモデルチェンジの理由

結果、採られた策は、徹底的なキープコンセプトです。

外見は変わらないけれど、ほとんどが新パーツ

現物をみても多くの人はそのGクラスが新型であると気づかないかもしれません。あえてそういう仕立てにしてあります。

しかし、この新型Gクラス、先代からは3~4点しか部品のキャリーオーバー(流用)はありません。ネジ一本に至る隅々まで改められています。

上が従来型のG550、下が新型のG550

搭載エンジンはダウンサイジング化され、9速という多段ATと組み合わせられていますから、CO2排出量は先代同グレード比で2割近く低減しています。ボディーも170kg減量。この軽さはCO2排出量だけでなく、走りにも大きな影響を及ぼしているわけです。

新型Gクラスの最大の変化といえるのが操縦性の改善です。

先代は舗装路走行よりも悪路走破性を最優先で設計されていたがゆえに、現代のクルマに慣れた身には、走る曲がる止まるの全てにおいて独特の間合いをくみながら運転する必要がありました。乗り心地においても横に揺すられるような動きが常に感じられる。こういった癖も、Gクラスだからこそと楽しむ姿勢が求められたわけです。

新型Gクラスでは、その癖の根源ともいえるフロントサスと操舵(そうだ)の形式をガラリと変えて、乗り心地や操縦性を一気に今日的なものとしました。レーンキープアシストなど最新の運転支援システムが搭載されています。

それでいて、期待される古風で武骨な趣をどこまで残せるか。これが実にうまくできているのです。

わざと手間を残して

たとえばオフロードを走るとき、ギアを変えたり制御ボタンを押したりといくつかの手順が求められます。現在のSUVであれば、そんなのモードセレクターを回すだけで全部自動設定してくれたりするのですが、あえてその手間を残している。アナログレコードにわざわざ針を落とすような、かつてドキドキしたプロセスを味わわせてあげようというわけです。

ちなみに先代はドアの開閉感ひとつとっても、精度の高い金属同士がガチッとかみ合う、ドイツプロダクトらしい手応えがあったのですが、新型Gクラスもそこのところを完コピともいえる仕上がりで応えています。

どこが、何が、Gクラスの勘どころなのか。モデルチェンジを散々引っ張っただけあって、さすがに熟知していらっしゃると思うのは、恐らく僕だけではないでしょう。

こちらは新型のG550。希望小売価格は1562万~2035万円。写真撮影:大音安弘
渡辺敏史
福岡県出身。出版社で二・四輪誌編集に携わった後、フリーの自動車ライターに。主な著書に、2005~13年まで週刊文春に連載した内容をまとめた「カーなべ」(上下巻、カーグラフィック)。
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