ベンツGクラス 違いが見えないモデルチェンジの理由

いくつかある中で最大の理由として挙げられるのが、元は北大西洋条約機構(NATO)軍に納入する多目的機動車として開発されたものを民生化したという出自です。いわゆるミルスペック(軍用規格)においては長期にわたる部品互換性などを担保しなければなりませんから、一度表に出した諸元をちょいちょいと変えるわけにはいきません。ゆえに民生品であるGクラスも歩を合わせるように大改変が見送られてきました。

そして、もう一つの理由は、そのかたくなさにまつわるものです。

丸目ヘッドライトに直線基調のボディー、むき出しのドアヒンジなど、時空を超えてきたかのようなクラシックなディテールは、モデルチェンジがなかったからこそ残った古き良きたたずまいです。乗ってみてもミルスペックならではの堅牢(けんろう)さが感じられます。その辺りが、今のクルマにはない個性的な味わいにつながっている。

その個性が評価されてか、実はGクラス、39年がたった今になって販売台数を急激に伸ばしているのです。

日本が世界的な人気の火付け役に

Gクラスの17年の世界販売は約2万台。10年に対して約4倍という、にわかに信じ難い数字です。これ、極限性能を必要とする冒険家が急に増えたというわけではないでしょう。そのヘビーデューティー感を自らのライフスタイルの表現に用いる、そういう需要が増えている。

日本にもファッション的な感覚でGクラスに接する人たちは相当数いらっしゃいます。というより、Gクラスの突出した個性にいち早く着目し、それを世に広めたのは、原宿に代表されるストリートカルチャーに近いところにいた日本のユーザーかもしれません。21世紀に入ってから徐々に顕著になっていった日本のこの動向、かつてダイムラーの役員から「マーケティング部門も注目していた」と実際に聞いたことがあります。

直近10年で4倍の伸びを示す異様な売れっぷりの商品を、なにも今、変えることはないんじゃないか。そう思うかもしれませんが、そういうわけにいかないのは、例外なしのCO2排出量削減に加えて、歩行者保護なども含めた衝突安全対策も盛り込むべき必要が出てきたから。これらはさすがに39年前の基本設計ではいかんともし難いわけです。

完全刷新を迫られたGクラス。法的要件のクリアやユーザビリティーの改善を果たすことを絶対としながら、現在の特殊な支持にどうやって応えるかが鍵となってきました。

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