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実は情報スキル低い日本の子供 端末利用で世界に遅れ

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こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。唐突ですが、スマートフォン(スマホ)って何歳くらいで買い与えるのでしょうか。2015年度の調査によると、スマホの利用率(ほぼ所持率)が半分を超えるのは、男子は15歳、女子は13歳です(内閣府『青少年のインターネット利用環境実態調査』)。男子は高校、女子は中学校に入った時に買い与える親御さんが多いようですね。女子の場合、「グループでLINEをやる、スマホがないと仲間外れにされる」などと言って、おねだりする年齢が早いのでしょう。

スマホ・パソコン所持率が段違いに低い日本の中学生

海外ではスマホデビューはもっと早いようです。やや古い資料ですが、2013年の内閣府の国際調査で、各国の青少年に情報機器の所持状況を尋ねています。表1は、13~15歳のうち、自分専用のスマホ・パソコンを持っている子の割合を掲げたものです。中学生の情報機器所持率の国際比較と見てよいでしょう。

日本と他の6カ国の間に格差がみられます。日本のスマホ所持率45.7%、パソコン所持率30.3%は、他国に比べて段違いに低くなっています。韓国や欧米では、中学生でも双方とも8~9割です。

表の3つの数値から、スマホもパソコンも持たない子の割合を計算すると、日本は41.3%にもなります。中学生の4割が自分のスマホもパソコンも持っていないのです。他国では8割前後が両方とも所有しているという調査結果ですから、日本のようにどちらも所持していない子はごくわずかだと分かります。

パソコンスキルは45カ国中最下位。原因は親の警戒心?

日本では、この手の機器を早いうちから与えるとよからぬことが起きるという警戒が強いのでしょうが、行きすぎた考えはよくありません。国際学力調査ではいつも世界でトップレベルなのですが、情報化社会を生き抜くのに必要な資質能力が身につくのかと、ちょっとばかり心配になります。

私に子どもがいるとしたら、スマホはともかくパソコンは早期に買い与えます。情報を加工・創造するスキルを習得し、情報を消費するだけではなく、生産・発信する存在になってほしいからです。

日本の生徒の情報を加工・創造するスキル、パソコンスキルは、他国と比してどうなのでしょうか。経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査「PISA 2009」によると、日本の15歳生徒のうち、コンピューターで「グラフ作成」「プレゼンテーション資料作成」を、自分で上手にできると答えた者の割合は3割ほどで、45カ国の中で最も低くなっています。

あくまで自己評定の結果で、日本の生徒は謙虚な回答をしたのかもしれませんが、パソコン所持率が低いこと(表1)を思うと、実態を反映しているような気もします。私の経験でも、エクセルで簡単な棒グラフも作れぬ学生さんに出会ったことが多々あります。3年生対象の授業でしたが、「エクセルなんて、1年時の情報処理の授業以来、開いたことがない」という子が多いのには仰天しました。これは、コンピューターが必要な課題を出さない、ないしはそれを必須ならしめる環境を用意していない大学の責任だなと、思った次第です。

まだプリント!? 日本の学校は情報化社会の孤島

ICT(情報通信技術)先進国のデンマークなどでは、庶務連絡や提出物のやり取りもネット経由ですのでパソコンがないと学校生活が成り立たないでしょう。「教育の情報化」が目指されていますが、それはICT機器を使った教授・学習活動だけでなく、学校生活全体のICT化も含みます。日本は双方とも遅れているのですが、とりわけ後者はひどい。図1は、学校のウェブサイトの利用度(教材などのダウンロード、庶務連絡のチェック)の国際比較図です。「瑞」はスウェーデンをさします。

ぐうの音も出ません。本当に先進国なのかと目を疑います。図1の右上にプロットされている国々では、教員が教材プリントを刷って生徒に配るなんてことはしません。行事への出欠の伝達も、ウェブサイト上でワンクリックです。日本の教員の過重労働は世界一ですが、学校のICT環境が立ち遅れていることが大きな原因になっているように思われます。文部科学省もそれを認識し、昨年の夏に出された「学校における働き方改革に係る緊急提言」では、校務のICT化の推進が提言されています。

日本でも、民間企業はここまでひどくないでしょう。学校だけが、社会のICT化から取り残されているのかもしれません。こうした「陸の孤島」で育った生徒は、実社会に出た時に戸惑うことになります。学校のICT化は、教員の業務の適正化だけでなく、情報化社会に適した教育を行うためにも必要なことです。

発信力こそ勝ち組に必要 今すぐ訓練を始めよう

日本の子どもの情報機器所持率が低いことの背景要因について、お分かりいただけたかと思います。ただ、所持率が上がればいいというのではありません。スマホでゲームをしたり、面白おかしい情報を消費したりするだけというのは寂しい。自身で情報を加工・創造し、発信できるようになるのが望ましい。そのことが、情報化社会で「勝ち組」となるための条件であるように思うからです。

この面の国際比較をしてみましょうか。OECDの「PISA 2015」では、「情報機器で、創作物(音楽、詩、動画、プログラム…)を発信することがどれほどあるか」と聞いています。日本の15歳生徒の回答分布は、創作物の発信が「全く or ほとんどしない」が79.3%、「月に1.2回」が9.3%、「週に1.2回」が5.3%、「ほとんど毎日」が2.6%、「毎日」が3.4%、となっています。全く(ほとんど)しない生徒が8割で、創作物を週1回以上発信する生徒は1割ちょっとしかいません。

この2つの割合をとった座標上に、46の社会を配置すると図2のようになります。

日本はネットで創作物を発信する頻度が最も少ない、ということです。スマホをよく眺めていますが、情報を受け取るばかりで、それを創造し発信する姿勢に欠けるようですね。

15世紀の印刷術の発明はグーテンベルク革命といわれますが、インターネットの出現はそれに次ぐ「ポスト・グーテンベルク革命」と形容されます(潮木守一・名古屋大学名誉教授)。一部の人間だけでなく、誰もが手軽に情報を発信できる。この文明の恩恵をもっと利用するよう、子どもを仕向けたいもの。むろん、よからぬ情報を発信してしまわないよう、情報モラルの指導も併行してのうえです。

大学で教えていた時、マスコミ志望の学生さんによく会いましたが、私は「ブログやウェブサイトを持ち、自分を発信しなさい」とアドバイスしていました。大学に入ったらすぐに自分のオリジナル・メディアを持ち、在学中にかけてじっくり育てる。その作物が、就職活動の強力な武器になります。怪しい塾などに行くべからず。

願わくは「大学に入ったら」ではなく、もっと早いほうがいいでしょうね。今回お見せしたデータは、希望的事実と受け取っていただきたいと思います。「子どもの頃からパソコンやスマホを使いこなし、情報発信している人はわずかしかいない。ちょっとの努力で他を抜きん出ることができる」。こう解釈してください。

舞田 敏彦
 教育社会学者。1976年生まれ。東京学芸大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。専攻は教育社会学、社会病理学、社会統計学。著書に『教育の使命と実態』(武蔵野大学出版会)、『教職教養らくらくマスター』(実務教育出版)、『データで読む 教育の論点』(晶文社)など。

[日経DUAL 2018年5月17日付記事を再構成]

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