スポーツマンシップが広げるビジネス 五輪を追い風に荒木重雄・スポラボ代表に聞く

「サッカーのW杯や野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)と違って、五輪はメジャースポーツからマイナースポーツまで様々な競技が行われます。普段接しない競技でも『選手たちは、こんな努力をして、こんな思いで、よきライバル・仲間と試合に臨んでいるんだ』ということを子供たちに教える最高の環境です」

「五輪の追い風を受けながら、スポーツの長期的な活用方法を確立すべきだ」と荒木氏は訴える

「グッドゲームを通じてスポーツマンシップを伝えることで、子供たちが大人になってアスリートになればさらにグッドゲームが生まれますし、アスリートにならなかったとしても、日本人のスポーツに対する見方や価値の捉え方が変わるはずです」

――その結果、スポーツの新しい活用方法が生まれてくるのでしょうか。

「今は『このチームの人気があって(企業の)露出が増えるからスポンサーになろう』といった、露出中心の短期的な考え方が主流かもしれません。でもスポーツの本質的な価値が見えてくると、『スポーツをもっと応援したい』という単純な話ではなく、『我が社のこれとスポーツを掛け合わせて、こんなことができるのではないか』という視点が生まれてきます」

「その一つが、ソーシャルスポンサーシップです。社会や企業の抱えている課題を、スポーツの持っている力で解決していけるのではないかと考えています」

――課題の解決とは、具体的にどんなイメージですか。

「高齢化、いじめ、外国人の受け入れなど、日本は社会課題の先進国です。スポーツを活用する場面はたくさんあると思います。たとえば一般の日本人がいきなり外国人と交流しようとしても言葉の問題もあって尻込みするでしょうが、スポーツを介せば、すぐに打ち解けられるのではないでしょうか」

「あるいはスポーツの本質、たとえば五輪の見方を小学生や未就学児に徹底的に教えるというのはどうでしょうか。五輪がないなかでそれを始めるのは難しいですが、今だったらできます。2年かけてプラットフォームさえつくってしまえば、五輪が終わっても続けられます」

中小企業にも身近にチャンス

――高いお金を払って五輪スポンサーになったものの、何をすべきか分からない企業が多いと聞きます。

「大きく分けて、2つの道があります。ひとつは投資したお金に対して、五輪までにどれだけ企業価値を上げられるかという短期的なマーケティングです。もっとも2年間に露出を最大化しても、売り上げを伸ばす効果は知れているでしょう。それより重要なのは五輪の後です。10年、20年先に自分の会社がどうスポーツに関わり、長期的な視点でどう企業価値を上げるかを考え、五輪の追い風を受けながらプラットフォームをつくる方が有効だと思います」

「五輪というとコカ・コーラやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のようなグローバル企業に目が行きがちですが、米国にはもっと小さな企業で地域の身近なスポーツを使ってうまくやっているところが相当あると思います。そうでなければ、米国にあれほどたくさんのマイナーなスポーツやチームは存在しません。日本の中小企業にとっても大きなチャンスだと思います」

(聞き手はオリパラ編集長 高橋圭介)

荒木重雄
1963年生まれ。日本IBMなどの要職を経て、ドイツテレコム日本法人の代表取締役に就任。2004年のプロ野球再編をきっかけに05年千葉ロッテマリーンズに転じ、執行役員として同球団の経営改革をけん引。09年にスポーツマーケティングラボラトリー(スポラボ)を設立して代表取締役に就任。13年から日本野球機構(NPB)の特別参与(後にNPBエンタープライズ執行役員)として、野球日本代表・侍ジャパンの事業戦略、デジタル戦略を担当。

日経からのお知らせ 日本経済新聞社は8月2、3日に慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科と共同で、スポーツ産業の未来をテーマにした講演会「SPORTS X」を開催します。スポーツ庁長官の鈴木大地氏、スポーツマーケティングラボラトリー代表取締役の荒木重雄氏、慶応大SDM研究科委員長・教授の前野隆司氏、ブラインドサッカー日本代表監督の高田敏志氏などが登壇します。申し込みは7月30日(月)まで、インターネットで受け付けています。詳細は「日経イベント&セミナー」(https://events.nikkei.co.jp/4249/)をご覧ください。

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