スポーツマンシップが広げるビジネス 五輪を追い風に荒木重雄・スポラボ代表に聞く

――先日閉幕したサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会はどうでしたか。

「W杯があれだけ盛り上がるのは、どのチームもそれぞれ国を担いで、決してずるをせず、相手を尊重し、ルールを尊重し、審判を尊重しているからであって、これ以上ないという力のぶつかり合いからグッドゲームが生まれます。そこに、みな心を引かれるわけですよね。勇気をもらう人もいれば、あすからがんばろうとか、もっと優しくなければと思う人もいるでしょう」

試合に勝った後のドイツ代表の振る舞いに、スウェーデンのコーチが抗議する場面も(6月23日)=ロイター

「グッドゲームは勝ち負けだけではありません。日本代表のポーランドとの試合では退屈なボール回しを見せられましたが、最後のベルギーとの試合ではみな感動して『ありがとう』となりました。試合終了後の選手の立ち居振る舞いやインタビューも大切です。ドイツ代表がスウェーデンに勝った後の挑発もありましたし、(グラウンドに頻繁に倒れ込んだ結果、過剰に演技していると指摘されたブラジル代表の)ネイマール選手もそうです」

――荒木さんというと、ロッテの売上高を3年で4倍に引き上げた実績で知られます。スタジアムとの一体運営、顧客情報管理(CRM)の導入、インターネットによる情報発信など当時としては画期的でした。それが、なぜ今度はスポーツマンシップなのですか。

ブラジルのネイマール選手はグラウンドに倒れ込む場面が多かったことから、「過剰な演技」と指摘された(7月6日のベルギー戦)=ロイター

「ロッテ時代にやったことは短期的な視点に立っていました。3年間で(売上高を)3倍、4倍にするというミッションがあって、それを実践することと、東京五輪・パラリンピックを契機に10年先、20年先のスポーツビジネスをどうするかということとは視点がぜんぜん違います」

「どんなに強いチームでも10試合のうち4試合は負けます。調子が悪いときには、負けが込むこともあるでしょう。ロッテ時代は、負け試合でもお客さんに足を運んでもらおうと懸命に考えました。短期ならそれも可能ですが、もし長期にわたってBクラスが続けば限界があります。ビジネスとしてはボラティリティー(変動)が大きすぎてサステイン(継続)しませんよね」

――長期でみると、ロッテで確立したビジネスモデルだけでは足りないということですね。

「私がロッテの改革をしていたのは05年から4年ほどです。当時はスポーツビジネスが市民権を得ていませんでしたし、プロ野球も全球団がビジネス、ビジネスしているとは言いがたい状況でした。それから10年以上がたち、今では、スポーツビジネスがある意味『マニュアル化』され、いろいろなリーグやチームに取り入れられるようになりました。それはそれでひとつのエンジンとして機能しているのですが、10年先、20年先を考えたとき、いまのモデルのままでは成長に限界があると思うのです」

「チケット、スポンサーシップ、放送権、ライセンス商品がスポーツ産業の4つの柱です。それらの価値を上げるといっても、真ん中の商品(ゲーム)をもっと輝かせないで、どうしてそれができますか。4つの柱以外に、もっと本質的にスポーツの価値を活用できるものがあるのではないでしょうか。そう考えるなかで、ポイントの一つがスポーツマンシップにあるという結論に至りました」

社会課題をスポーツで解決できる

――スポーツマンシップを広めるうえで、五輪はどういう役割を果たせますか。

「五輪は見る人にスポーツの本質を伝えるチャンスです。オリンピック憲章にもある通り、オリンピック・ムーブメントの目的はスポーツを通じた青少年育成であり、金メダルを取ることではありません。これらスポーツの持っている価値の源泉に焦点をあてて、国民の間に広げる、つまりは『人材育成に貢献』することが重要です」

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