マネー研究所

カリスマの直言

北欧に学ぶ キャッシュレス支える強い経済(加藤出) 東短リサーチ社長チーフエコノミスト

2018/7/23

デジタル通貨を中銀が発行することに関しても、フィンランドとデンマークの中銀は慎重または否定的な見解を見せている。

■中銀デジタル通貨についてはトーンダウン

先進国の中銀でこれまで最も中銀デジタル通貨に前のめりだったのはスウェーデンの中銀であるリクスバンクだ。北欧の中でも同国は特にキャッシュレス化が進んでおり、名目国内総生産(GDP)に対する現金流通高の比率も低下に拍車がかかっている。遠くない将来、市中で現金がほぼ完全に利用されなくなるタイミングがやってくる可能性がある。

そういったとき、「何らかの形で中銀が直接発行する電子的なマネーが存在する方がよいのではないか?」という問題意識でリクスバンクは「e-クローナ・プロジェクト」を検討してきた。中銀デジタル通貨において世界で最も先導的な中銀になりたいという願望もその背後に働いていたと思われる。

17年時点で同行は、18年末までにe-クローナを発行するか否かを決定すると発表していた。ところが最近はニュアンスがトーンダウンしているように感じられる。e-クローナ発行の最終決定は19年後半に行うという。これは、昨年暮れ頃から今年にかけて主要国の中央銀行幹部や国際決済銀行(BIS)が、中銀デジタル通貨の本質的な問題を指摘するようになったことが影響していると推察される。

■民間銀行の預金が大規模シフトの恐れ

次のようなケースが懸念されている。デジタル時代のニーズを捉えた中銀デジタル通貨は利便性が高いだけでなく、民間銀行の預金よりも信用度が高い。それゆえ、今のような低金利の時代は預金が中銀デジタル通貨へ大規模にシフトする可能性がある。それは金融システムを不安定化させる。金融危機が発生して銀行の信用力が低下したときも、預金を中銀デジタル通貨に移し替える「電子取り付け騒ぎ」が瞬時に発生し得るため、銀行破たんが従来よりも起きやすくなる。

仮に中銀に国民の金融資産が集まってしまった場合、中銀は一般企業や個人に貸し出しを行う機能を持っていないのでお金が流れなくなる。それを避けるために中銀に民間への貸し出しを行わせたら、「事実上の社会主義経済」になり、経済の効率性は低下する恐れがある。

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