健康・医療

睡眠(ナショジオ)

ブレーキが効かない 睡眠不足の人がキレやすいワケ

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/8/28

ナショナルジオグラフィック日本版

写真はイメージ=PIXTA

いつ頃からだろうか、キレやすい人が増えているという記事をよく見かけるようになった。老若男女にかかわらず幅広い年齢層や社会階層で「キレる」という現象が見られるらしい。ただ、少しのことでもキレやすくなっているのは、睡眠不足が原因の可能性もある。今回は、キレやすさと睡眠の関係を見ていこう。

■「キレやすい」とはどういう状態?

世間一般に言う「キレやすい」という現象の正確な定義は知らない。そもそもそのような定義があるか分からないのだが、私なりに解釈すると、キレやすい人物の特徴とは、(1)遭遇した出来事に対して怒りが湧きやすい、(2)その怒りの度合いが大きい、(3)怒りが持続する、(4)怒りが暴言や暴力などで表面化する、といったあたりだろうか。

このような情動(感情)や行動を自分で制御できなくなる性格的特徴を生まれながらに持つ人は少数ながら一定数いる。そのために人間関係の破綻や暴力行為などの問題を生じる場合には「秩序破壊的・衝動制御・素行症群」と診断される。耳慣れない病名だと思うが、このような「キレやすい」性格も極端な場合には「病気」の一種とするのが現代の精神医学の考え方なのである。ただ、最近になってこの病気の患者が増加しているという話は聞かない。

一方で、もともとキレやすい性格ではないのに、何らかの原因で後天的にそうなることがある。高齢者がその代表である。孔子によれば「六十にして耳順(なら)う(六十才で人のことばに素直に耳を傾けることができるようになる)」そうだが、なかなか理想通りにはいかない。実直に勤め上げた人が、退職後徐々に怒りっぽくなり、時事問題にブツブツ文句を言っていた間はよかったが、しまいには家族、友人、隣人に対してもささいなことで激怒するようになった、などという相談を受けることがある。

■高齢になってキレやすくなる人も

孤独や役割の喪失、貧困など高齢者がキレる事情はさまざまあるが、前頭葉の機能低下が下地として隠れていることがある。前頭葉は大脳の前部(額の後ろ側)にあり、物事に対する意欲や注意、記憶などを司る。大脳の奥深くにあり情動のコントロールを司る大脳辺縁系とも前頭葉は密接に結びついており、心を揺るがす出来事に遭遇した際に喜怒哀楽が暴走しないよう適度にブレーキを踏んで情動を調整する役割も担っている。

年とともに怒りっぽくなるご老人を見かけることがあるが、前頭葉機能が低下して感情の大きな振れを抑えきれないためだというわけだ。ときにはそのような性格の変化が認知症の初期症状になる場合もある。特に前頭葉が主に障害される前頭側頭型認知症(ピック病)では、物忘れではなくささいなことでキレやすくなったなどの性格変化で最初に気づかれることも少なくない。

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