マネー研究所

マネートレンド

クラウドファンディング 貸付型が浸透、高利回り魅力

2018/7/21

メキシコの女性起業家にリスクを踏まえて投資するプロジェクトもある

 インターネットで事業資金を募るクラウドファンディング。高利回りを背景に投資額が増え、使い道も多彩になってきた。他方、回収遅延などリスクも高い。最新動向と留意点を探った。

◇  ◇  ◇

 「好きな京都で、町家が再生されるという計画に共感できた」。東京都の女性会社員Aさん(42)はクラウドファンディング(CF)への投資理由についてこう話す。

■京町家の再生、新興国事業支援…

 Aさんが投資したのは、CF大手クラウドリアルティ(東京・千代田)が募集した「京町家再生プロジェクト」。京都の町家は伝統ある観光資源だが、近年は老朽化が進み、空き家も目立つ。個人投資家から資金を募り町家を改修し、魅力ある宿泊施設に再生して収益を投資家に還元する。

 Aさんはこの町家再生など国内の不動産開発4案件に投資し、運用総額は約250万円。運用期間は約3年、平均7%程度の利回りを目指す内容だ。AさんはCFの投資説明会も積極的に参加。「今後も自分が共感できる投資計画を探し、老後資金などの蓄えを増やしたい」と話す。

京都の伝統的な町家の再生に個人の資金を活用(京都市)

 CFには、いくつかの類型がある。市場規模が多いのは投資型。Aさんが投資したのは「ファンド型」で、収益の一部を分配金として受け取る。投資先も明示される。クラウドリアルティは2017年5月から、町家再生を含む7つのファンド型事業で計4億円近くを募集。即日満額となったものもある。鬼頭武嗣社長は「定期的な運用報告、投資家と関係者との会合などを通じ、CFの魅力を高める」と話す。

 CF全体の約9割を占めるのが、同じ投資型に分類される「貸付型」(ソーシャルレンディング)だ。仲介業者を通じて融資し、一定期間後に元本・利息を得る。仲介業者が貸し出す利率は年15~20%が上限で、投資家への提示利回りは5~10%前後が多い。

 一方、CFには非投資型もある。「寄付型」は被災地や新興国支援などのテーマに投資家がお金を出し、見返りを求めない。これに対し「購入型」は、支援金額に見合ったリターンを求めるもので、国内CF全体の7%だ。

 CFは貸付型を中心に10年代前半から市場を広げてきた。投資対象は主に、集合住宅やビルなどの国内不動産開発関連。個人が長引く超低金利で運用に苦労する中、一部の層が不動産の高い運用利回りに着目した。ただ20年の東京五輪以降の不動産市況下落リスクもささやかれる中、個人は社会貢献の視点を加えた投資を求める傾向がある。CF仲介会社は「社会に役立つ」視点の新たな投資先を開拓し、こうしたニーズに応えようとしている。

 「新興国の成長に向けた支援をしませんか」。クラウドクレジット(東京・中央)は海外の投資案件を中心とした資金募集を仲介する。メキシコの女性起業家支援、ペルーの生活困窮者支援など、支援内容は多彩だ。

 6月に入り、同社は新興国の貧困層支援、教育問題の解決といった社会問題の解決と経済リターンを目指す「社会インパクト投資」の投資先を開拓する方針を表明。すでにペルーやニカラグア、東欧など多くの地域の計画に投資する案件を手掛けており、さらに拡充する姿勢だ。事業自体のリスク、ドルや新興国通貨の為替リスクに留意しなければならないが、累計出資額は7月10日時点で120億円近くに増えた。

 杉山智行社長は複数の新興国に頻繁に出向き、信頼できるプロジェクト連携先の開拓を目指している。「海外の事業を支援したい個人投資家と、資金を調達して事業を成長させたい現地の起業家のニーズをつなぎたい」

 大手も案件の多様化に乗り出している。SBIソーシャルレンディング(東京・港)は昨年から、来日するカンボジア技能実習生の支援を目的とする案件を募集している。不動産関連だけでなく、太陽光発電関連の計画も手掛けている。

 CFは利回りが高い分、回収遅延・不能に陥るリスクをまず考えておきたい。神奈川県の女性会社員Bさん(48)は現在、40万円近くをCF貸付型に投資。「子供が高校3年生でまだ教育費の負担が大きい。大学にかけてかかる教育費には手を付けず、余裕資金のみの運用にとどめている」と話す。投資家層は40歳代が多く、老後資金や住宅資金などの形成が必要な年代層。投資対象によっては「社会貢献」と割り切るなどして、必要な資金に手を付けないよう気をつけたい。

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL