eスポーツで国体を刷新 魅力度最下位、茨城県の逆襲大井川知事が語る、競技会開催の舞台裏

「茨城、栃木、群馬の北関東3県は、かつて下位を独占していたことから『だんご3兄弟』と呼ばれていましたが、昨年はほかの2県が上がって茨城県だけが取り残されました(群馬県が45位から41位、栃木県が46位から43位)。これから茨城県が目指すのは、ずっと高いところでなければなりません。最初から下の方を目指していたら、そこに行くのも大変になって、結果的に今とあまり変わらなくなると思います」

「我々としてはつくばを中心に科学技術の県というイメージを持ってほしいのですが、なかなかそうは見てもらえません。eスポーツは茨城のイメージを大きく変えるきっかけになるんじゃないでしょうか」

eスポーツの決勝戦は科学技術の先端施設が集積しているつくば市で開く。一つのモデルとなるのが、スウェーデンなどで開催される世界的なゲーム関連イベント「ドリームハック」だ。

「国体をきっかけに、つくばがeスポーツ関連のいろいろなイベントの聖地になってほしいです。高校野球の甲子園のように、ゲーム好きの少年たちの憧れの場所になるといいですね」

知事に就任直後、えひめ国体を訪れて県選手団を激励した(前列左から5人目が大井川氏)=茨城県提供

部活動にeスポーツあっていい

話題はeスポーツから学校教育にまで及んだ。大井川氏はドワンゴの取締役をしていたとき、インターネットを通じて学ぶ「N高等学校」の設立に関わった。開校から3年目の今年は、在校生のなかからeスポーツのトップ選手が出現。国内予選と東アジア地域予選を勝ち抜き、アジアの五輪といわれるアジア競技大会(8、9月にジャカルタで開催)への出場を決めた。

「うれしいですね。異能の人が集まってきています。コンピューターのプログラミングでも、すごい生徒が出てきたと聞いています。型にはまった学校に行かなくても活躍できる事例を、これからもどんどん作っていってほしい。私自身にとっても、N高校の設立は非常に面白い経験でした。画一的なカリキュラムにもとづき点数を競うという文科省の教育システムに対する、一種のアンチテーゼです」

「才能を伸ばすことについて、文科省の教育システムは苦手です。ボトムアップといいつつ落ちこぼれを作り、その一方で吹きこぼれ、つまり才能ある人たちについても天井を作ってしまっています。茨城県はN高校を参考に、吹きこぼれる人たちにどんどん伸びていってもらえる仕組みにトライしたいです。ドワンゴと連携して、N高校を誘致することも考えています」

型にはまらない教育の一環として、eスポーツを学校の部活動に採り入れることにも前向きだ。

「学校の部活動にeスポーツがあっても全然おかしくないですね。生徒たちが10人集まってやりたいといったら、学校側としては認めてあげるべきだと思います。顧問になる先生がいないからとか言って押さえつけてしまうのは、もったいない。生徒を信頼してやらせたらいい」

大井川知事は64年生まれ。子供のころから身近にゲームがあった「ゲーム世代」よりは、やや上に当たる。

「私が中学生のときにインベーダーゲームが流行し、大学生のころにファミコンブームがありました。ゲームはスーパーマリオくらいしかしたことはありません。国体で取り上げるウイニングイレブンももっぱら見るだけですが、画面はすごくリアルですね」

大井川氏は通商産業省(現在の経済産業省)を飛び出して、マイクロソフト、シスコシステムズ、ドワンゴとIT業界を渡り歩いた後、知事選に立候補した。なぜ政界に打って出たのか。

「前例がないからじゃないですか。僕がすごく尊敬していた経産省時代の上司が言っていましたが、前に進むかどうか迷ったときには一歩前に出るんだと。実際にそうだなと思います。いろいろなことをポジティブに考えていけば、いろんな道が開けるし、おのずと充実した人生を送れるんじゃないかと感じています」

「これやったらリスクだろうとばかり言っていたら、何もできなくなります。何もせずにずっと今の場所にとどまっていればいいかというと、実はそこにも大きなリスクが潜んでいます。チャンスを見ながら物事を決めて、リスクを考えながら実行していくほうがいい。もっとも国体でeスポーツをやるくらいなら、たいしたリスクもありませんがね」

(聞き手はオリパラ編集長 高橋圭介)

大井川和彦
1964年4月、茨城県土浦市生まれ。83年に水戸一高、88年に東大法をそれぞれ卒業。同年、通産省(現経産省)に入省。96年ワシントン大学ロースクール卒。2003年マイクロソフトアジア(執行役員)、10年シスコシステムズ専務執行役員、16年ドワンゴ取締役。17年9月から現職。スポーツは観戦より実践派で、小学校と高校で柔道、中学で野球、大学でアメリカンフットボールをしていた。
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