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のっぴきならないペペロンチーノ 素材命、どう作る?

男のパスタ道(2)

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NIKKEI STYLE

日本経済新聞出版社の新書、日経プレミアシリーズ『男のパスタ道』からの2回目。パスタ道を極めるためには、料理の入り口としてのハードルは低いものの、奥があまりに深い、ペペロンチーノのレシピを作り上げること。著者の壮大な挑戦が始まった。

私たちが「ペペロンチーノ」の名で親しんでいるパスタ料理は、正式にはスパゲティ・アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ(spaghetti aglio olio e peperoncino)と言う。アーリオ=ニンニク、オーリオ=油、ペペロンチーノ=唐辛子が入ったスパゲティという意味だ。

日本では、アーリオ・オーリオと呼んだり、ペペロンチーニ(唐辛子の複数形)と呼ぶこともあるが、本書ではペペロンチーノで通すことにする。

パスタ料理の名前には、カルボナーラ(炭焼き風)、ブッタネスカ(娼婦風)、カチャトーラ(漁師風)といった職業に由来する名前や、ボロネーゼ(エミリア・ロマーニャ州の町ボローニャ風)、アマトリチャーナ(ラツィオ州の町アマトリーチェ風)といった地方性・郷土性を感じさせるものも多い。

それに比べてアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノは、ただ単に材料名を並べただけ。きわめてシンプルなネーミングだ。しかし、そのシンプルさこそ、ペペロンチーノの特異性を象徴しているように思う。

パスタをゆで、ニンニクと唐辛子を入れたオイルソースにからめるだけ。味付けにも塩しか使わない。非常に短時間で作れる。あまりに簡単なので、イタリアでもレストランで出す料理というよりは、家庭料理という位置づけた。

ただ、シンプルなぶん奥が深いとも言える。どんなパスタを選ぶか。どんな水や塩を使い、どれくらい入れるか。ニンニクはスライスするのか、つぶすのか。どこの産地の唐辛子を使うのか。どんな鍋を使って何分間ゆでるか……。細かな差異が、料理の出来にストレートに反映される。

ペペロンチーノには、ほかのパスタ料理と決定的に違う点がある。チーズやアンチョビ、あるいはクリームやバターなど、旨味(うまみ)はコクの強い食材を使わないことだ。旨味などに頼れないから、味のごまかしがきかない。素材の持つ力、例えばパスタに使われた小麦の味の違いすら見えてしまう料理なのだ。

実際、チェーンの格安レストランほど、シンプルなペペンチーノを出さない。マーケティング上の理由もあるだろうが、安い食事を使っているため素材勝負を避けたいという理由もあるのではないか。

食材を最低限にしばり込んだうえで、味をどこまで極めていくか。いわば「引き算」の料理であって、蕎麦打ちに通じるものがある。この本で極めていきたいパスタ道にぴったりの「求道的なパスタ」だと言えるのである。

ペペロンチーノは求道的なパスタでありながら、実は入り口のハードルが低い。それゆえパスタ道入門編にはぴったりだ。

まず、使う食材が簡単に手に入り、鮮度が落ちにくいものばかりなので、常備しておくことができる。適当に作ってもそこそこおいしく、単純な料理であるがゆえ失敗が少ない。初心者が挑戦しやすいのだ。

調理時間も短く、入手困難な高級食材を使うわけではないので、失敗してもまたすぐチャレンジできる。試行錯誤をくり返しつつ、その味を追求していけるのだ。これが仔羊のすね肉を30種類のスパイスとともに5時間も煮る料理であったら、時間もお金もかかりすぎて、決して求道の楽しみを見いだすことはできないだろう。

私自身、ペペロンチーノは料理人生の入り口だった。一人暮らしだった学生時代、しょっちゅう作るようになったのは、スーパーで生鮮品を買わなくても、家に常備してある食材で思い立ったらすぐ気軽に作れるからだ。

あまりにハードルが低いのでフラフラと迷いこんだわけだが、何度も作るうちに、よりよい品質の食材を使ったり、作り方を工夫したりすると、仕上がりのおいしさが歴然と変わることに気づく。以来、ペペロンチーノに夢中になった。

最初はパスタを変えることからはじまった。貧しく夜型の生活だった学生のころは、とにかくいちばん安いもの、あるいは夜中にコンビニで買えるものしか選択肢がなかった。それが、例えばディ・チョコ(イタリアのメーカー)のスパゲティを使って、国産パスタにはない独特な香りと食感に驚いたり、イタリアでいちばん売れているという噂を聞いてバリラのスパゲティを使ってみたり。

製品によっては味がまったく違うのだと分かり、どんどんマイナーなメーカーのものを試すようになった。いまからもう20年前の話だが、90年代はイタリアからパスタの輸入が急増した時期でもあり、いまほどではないにせよ、少し探せばさまざまなパスタが買えた。当時、オンライン上ではすでにマニアたちが、どのパスタが美味いか、熱い論争をくり広げていたのだ。

麺の太さも直径2ミリ以上の太いものから、1.2ミリ程度の細いものまで使って比較したし、オリーブオイルもさまざまなものを試した。

そこまでいくと、製品を変えるだけでは満足いかなくなる。水の質、塩の量、火力、ゆで時間など、調理方法も変えた。もっともおいしくゆでる方法を見つけ出すためである。いまから考えると、科学的でない不毛な試行錯誤も多かった。おいしくなるという結果より、工夫すること自体が楽しかったのだ。

私が料理の面白さに出合い、それを仕事とするまでになったきっかけは、ペペロンチーノだったとも言える。ペペロンチーノの持つ、簡単に作れる気軽さと工夫する楽しさのおかげで、いまの自分があるのかもしれない。

さて、当時よくペペロンチーノを作っていたのは、飲み会のあとに小腹が減ったとき(飲み屋からの帰り道でラーメンが食べたくなる人は多いと思うが、あの感覚でペペロンチーノを作って食べていた)。それから家に友達を呼んで飲んだときだ。イタリアの都市部でもそういった食べ方をされていることが多いという。

一人のときは大学の授業やアルバイトの時間が迫り、大急ぎでペペロンチーノをササっと作ってかきこむことも多かった。また現在は、深夜のバーでペペロンチーノが食べたくなり、作ってもらうことも多い。

その意味で、ペペロンチーノは興奮や喧噪、慌ただしさといった印象と切り離せない。ニンニクの匂いや唐辛子の辛味と相まって、「気持ちをたかぶらせる刺激的なパスタというイメージが強いのだ。多くの方が同意してくれると思うのだが、ペペロンチーノは、ゆったりとした休日、田舎に出かけて自然の中でのんびり食べるような、癒し系の味ではないだろう。その意味で都会的な味であると言えるかもしれない。

実は、化学的側面から見ても、ペペロンチーノは刺激的なパスタである。その理由については本書で解説するが、ここではペペロンチーノが刺激的な食べ物であることを頭の隅に入れておいてほしい。

そのパスタがどんな料理であるかによって、目指すゴールは違ってくる。ペペロンチーノが刺激的なパスタだと定義することで、それに合わせてパスタのゆで方や塩加減も変わってくるのだ。本書における「パスタのゆで方」は普遍的な内容ではあるが、最終的には「刺激的なパスタのためのゆで方」にグッと的をしぼった。

このレシピなら、間違いなく、とびきり、おいしい一皿が作れるはずだ。

土屋 敦 著 『男のパスタ道』(日本経済新聞出版社、2014年)プロローグ「求道者のパスタ」から
土屋 敦(つちや あつし)
ライター 
1969年東京都生まれ。慶応大学経済学部卒業。出版社で週刊誌編集ののち寿退社。京都での主夫生活を経て、中米各国に滞在、ホンジュラスで災害支援NGOを立ち上げる。その後佐渡島で半農生活を送りつつ、情報サイト・オールアバウトの「男の料理」ガイドを務め、雑誌等で書評の執筆を開始。現在は山梨に暮らしながら執筆活動を行うほか、小中学生の教育にも携わる。著書に『なんたって豚の角煮』『男のパスタ道』『男のハンバーグ道』『家飲みを極める』などがある

男のパスタ道 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 土屋 敦
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 918円 (税込み)

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