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パラアスリート 夢を追う

「五輪で戦いたい」 義足ジャンパー、世界記録に迫る ドイツ走り幅跳び マルクス・レーム選手

2018/8/7 日本経済新聞 夕刊

2016年のリオデジャネイロ五輪に出場を目指したが認められなかった(7月8日、前橋市)=共同

パラリンピアンでありながら五輪のメダリストにも勝る記録を持つドイツの陸上選手、マルクス・レームさん。7月に前橋市で開かれたジャパンパラ大会に出場し、男子走り幅跳び(切断などT64)で8メートル47と、自身が持つパラ世界記録を3年ぶりに更新した。パラリンピック2連覇中の29歳。2年後の東京大会ではどんな跳躍を見せてくれるのか。

自身が持つパラ世界最高を3年ぶりに更新した(7月8日、前橋市)=共同
8メートル47は健常者の記録で今季世界ランク3位に相当する(7月8日、前橋市)=共同

1回目からスピード感ある助走と力強い踏み切りで8メートル18を記録。最終6回目は追い風にも背中を押され、砂場を跳び越えてしまいそうなほどの大ジャンプだった。世界新記録がアナウンスされ、固唾をのんで見守っていた観衆から大歓声を浴びると、何度も雄たけびを上げて拳を握った。「いい感触だった。ずっと(自分の)世界記録を破ることにトライしてきた。日本で達成できてうれしい」

「ブレード・ジャンパー」の異名を取るレーム選手は、パラ陸上界を代表するアスリートだ。2014年にドイツの大会で健常者を抑えて優勝した経験を持ち、15年のパラ世界選手権(ドーハ)で当時の世界記録(8メートル40)をマーク。これは12年ロンドン五輪の金メダルの記録を9センチ上回るもので、大きな話題を呼んだ。

世界を驚かせる第一人者はパラリンピアンとしての誇りを持ち、以前から五輪出場を熱望してきた。「五輪でも戦いたいと常に思っている。より多くの人に、我々に何ができるのか見てもらいたいし、夢を持ち続ければかなうという姿を見せたいんだ」。だが、五輪とパラの間に立つ壁は高い。16年のリオデジャネイロ五輪出場を目指したが、「競技用義足が有利に働いているのではないか」という議論が起き、結局、悲願はかなわなかった。

「オリンピアンとパラリンピアンの距離をいっそう近づけたい」と夢を語り、垣根を取り払う協議を今後も続けたいと考えている。前橋市の大会で世界記録を塗り替えた際には「五輪の最後にオリンピアン2人とパラリンピアン2人による混合チームでリレーを行い、パラリンピックにスムーズに移行するのが理想ではないか」と持論を披露した。

今回の8メートル47は、健常者の記録で今季世界ランキング3位に相当する。米国の元陸上選手、マイク・パウエルさんが持つ8メートル95の世界記録にどこまで迫れるのか。そのことに話が及ぶと「僕には高い数字。でも(競技を続ける)モチベーションになっているので、チャレンジしていつか抜ければ。それが(20年の)東京だったらうれしいね」と声が弾む。

どれだけ遠くへ跳べるのか――。その挑戦に限界はない。「パラの選手がどれだけできるかを見てほしい。そのための努力は続けていく」。2年後の東京では、さらなる快記録を目の当たりにするかもしれない。

(渡辺岳史)

[日本経済新聞夕刊2018年7月17日付を再構成]

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