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朝6時、池江璃花子はプールに立つ 五輪日程に備え 迫真・東京五輪2年前(2)

2018/7/27 日本経済新聞 朝刊

池江は早朝練習で2年後の「変速日程」に備える(写真は5月のジャパンオープン)=共同

競泳女子のエース、池江璃花子(18)の朝は早い。午前6時には練習する東京都内のプールサイドに立つ。「できるだけ多く朝練を入れるようにしている」のは、2年後の本番に向けたシミュレーションだ。

人気競技の競泳は多額の放送権料を払う米国のゴールデンタイムに合わせ、午前に決勝レースを実施する。わずかなズレがメダルの有無や色を分ける100分の1秒の世界。地の利を生かすためにも、今から朝型への準備を怠らない。

5月に五輪コースが発表されたマラソンで、日本陸上競技連盟が着々と手を打っている。来年9月に行う代表選考レースを本番とほぼ同じにした。「コースを知っていれば本番への自信になる。地の利を生かさないと」と強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦(62)。

コースが分かれば対策も講じやすくなる。酷暑のレースを想定し、今から発汗量などのデータを集める。「5キロごとの時間経過による気温の変化、風向きやビル風の影響といったデータも使える」と長距離マラソンディレクターの河野匡(57)。企業と協力してユニホームの素材開発にも生かす考えだ。

食事、時差、応援。選手にとって自国開催のメリットは多岐にわたる。一方で「大会の成功=開催国の活躍」という風潮が強まる中、選手が受けるプレッシャーも大きくなっている。

東京・西が丘の国立スポーツ科学センター(JISS)では、心理サポートの一環でカウンセリングを実施している。昨年の相談はのべ800件。「年々増えている。内容はネガティブなものがほとんど」。心理グループ先任研究員として相談相手と向き合う立谷泰久(47)は明かす。「試合で練習の力が出せない」「海外に行くとパフォーマンスが落ちる」「チームメートとの関係に悩んでいる」……。選手選考の重責に苦しむ指導者の相談も少なくない。

JISSでは2020年開催が決まった後から「プレッシャー対策」を取り組むべき課題の一つとしてきた。1964年東京大会に向けた医科学支援でも「あがりの研究」が行われていたという。「責任感や使命感が大きくなると負のスパイラルに陥りやすくなる。メンタルサポートは重要」と立谷は語る。

カヌーで起きたライバル選手に対する禁止薬物混入事件も勝利への重圧が原因だった。熱気がリスクに変わる危うさを認識しないといけない。

(敬称略)

[日本経済新聞朝刊2018年7月17日付を再構成]

「迫真・東京五輪2年前」の連載はこちらをご覧ください

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