あなたの「顔形」を引き立たせるシャツを探そう
ファッションプロデューサー 五十嵐かほる
前回の「あの人が似合うものが、あなたに似合うとは限らない」では、「顔の形を知る」「体形を知る」というところから始まり、ご自身がお持ちの「特徴を生かす」、または目立たせないように「さりげなくごまかす」技術を使って演出することを大まかに説明しました。今回からは、実際に顔の形ごとに似合うものを分類したいと思います。
その前に、少しだけ前回のおさらいをしたいと思います。顔の形はその特徴によって、男顔ともいえる「直線系」と、いわゆる女顔の「曲線系」の大きく2つに分けられます。さらに、それぞれ3つに分類され、代表的な顔の形は計6種類となります。
理想の顔の形とされる卵顔、さらに面長、丸顔が、曲線的で丸みを帯びた輪郭を持つ「曲線系」。四角顔、ベース顔、逆三角形顔といった、直線的でシャープな輪郭なのが「直線系」です。
もちろん、曲線と直線両方の要素を持つ「ミックス顔」の人も多くいます。例えば、丸顔でえらの張った人の場合は「丸顔とベース顔のミックス」となります。
■服を選ぶなら「顔幅」にも注意
顔型に加えて、服装を選ぶ上で重要なのが顔幅です。顔に幅がある人は、顔が大きく見えてしまうため、顔の大きさを感じさせない着こなしが適しています。
誤解のないように申し添えますが、顔が大きいことが悪いわけでは決してありません。ひとつの個性で、かつご自身をブランディングしていく上では、「迫力」「安心感」「信頼感」といったビジネスに欠かせないポジティブなイメージを演出しやすいからです。ただし、顔の大きさが気になるものの、スーツを格好良く着こなしたいのであれば、全体をすっきりとさせた方がすてきに映ります。
以下、顔の形と顔幅に応じた、着こなしのコツを紹介します。
■曲線系に似合う襟
卵形は比較的、どんなタイプのワイシャツも似合いますが、丸顔なら、襟先の開きが100~140度程度の「ワイドスプレッドカラー(別名、ウィンザーカラー)」がお薦めです。
反対に、基本的なレギュラーカラー(襟先の開きが75~90度程度)やボタンダウンは、細いカラー(襟)によって、顎の丸みが強調されてしまいます。特に丸顔で顔幅のある人にはお薦めしません。また、仕事の都合で選択の範囲が限られるという人には、襟先を丸くカットした「ラウンドカラー」がお薦め。面長顔ならレギュラーカラーやボタンダウンシャツがお薦めです。
■直線系に似合う襟
ベース顔の方と四角顔には、ワイドスプレッドカラーと、襟先の開きが80~100度程度の「セミワイドスプレッドカラー」がお薦めです。顔幅が気になる方には、襟の開きが水平に近い「ホリゾンタルカラー」も良いでしょう。
逆三角形顔の人は、レギュラーカラーやボタンダウンシャツがお薦めです。顎の尖った角度が、襟ぐりやシャツの形にマッチすると、すっきりした印象を与えます。
その半面、面長顔と逆三角形顔にお薦めできないのが、ワイドスプレッドカラーやホリゾンタルカラーです。こうした襟の横幅が広いものを選んでしまうと、襟が悪目立ちして、顔が貧弱に見えて頼りない印象を与えてしまいかねないためです。
ただし、ボタンダウンは、装いをカジュアルダウンしますので、ドレスコードや職種によっては注意が必要です。
そして、美しい襟元の鉄則として、襟の幅とネクタイのノット(結び目)の幅の比率を「8:5」で結ぶと、美しく仕上がります。この比率は、最もバランスが整って美しいとされる「黄金比」にあたります。
ですから、襟元の美しさは、シャツの襟の大きさにも大きく左右されるのです。
■シャツはシンプルかつスタンダードで
かつてエルビス・プレスリーや石原裕次郎が活躍していた時代は、襟が大きく、アピール力が半端ないものがクールだったようです。個性を打ち出すポイントこそ異なりますが、最近のワイシャツもかなり個性的です。
例えば、白シャツに黒ボタンでボタンホールも黒い糸で縢(かが)られていたり、白いボタンに黒い糸でボタンが付いていたり。また、襟が2枚仕立てになっていたり、襟の周りに色糸でステッチを施したり。こうなると、おしゃれをアピールするどころか過剰で、かえって安っぽい印象を与えてしまいます。シャツはシンプルかつスタンダードなものを選びたいですね。
■顔幅があれば「オックス」、細ければ「ブロード」
シャツの素材は、顔幅のある人なら、しっかりとした素材、例えばオックスフォード(太い糸を使った厚手の生地)やロイヤルオックスフォード(細い糸を使ったひし形の織り柄の生地)、ヘリンボーン(魚の骨のような織り柄の生地)、シャンブレー(縦に色糸、横に白糸を使った平織り生地)などをお薦めします。
顔幅の細い人は、基本的なブロードクロス(英名ポプリン、細かな横畝のある平織りの生地)、綿ローン(薄くて柔らかな平織りの生地)や細い糸を使ったリネン(麻織物)やツイル(綾織、織り目が斜めの畝状に見える生地)がお勧めです。
■色は白かサックスブルー
シャツの色は基本的に白とサックスブルー(淡い青)がお薦めです。何よりも清潔感をアピールしやすいのと、変なこだわりを感じさせないため、素直で爽やかな印象を与えやすいでしょう。
また、職業的に問題がなければ、細いストライプもお薦めです。遠目には無地に見えるため、コーディネートをするのも比較的に簡単です。特に、直線系の顔型や顔幅の広い人にはお薦めしたいです。
ちなみに、女性ではありますが、「35億」で有名になったお笑いタレント、ブルゾンちえみさんが 直線的なヘアスタイル&メイクをされています。彼女の顔型も、ぽっちゃりしているものの、ベース型の直線系。しかも「できるキャリアウーマン」を演じた彼女の衣装は、はっきりした太めのストライプが多いというわけ。全体的なイメージを大切に考えておられるようです。
と言うわけで、顔や襟の形だけでなく、洋服の素材や柄にも個性が出やすいため、注意して選んでくださいね。
イラスト出典:「桁外れの結果を導く 一流の男の演出力」(日本能率協会マネジメントセンター刊)
スタイルファクトリー社長、パーソナルスタイリスト協会代表理事。武蔵野美術大学短期大学部卒、全日本空輸で国際線客室乗務員として勤務した後、独立。エグゼクティブを中心にしたスタイリングやファッションプロデュース、研修などを手がける。著書に「桁外れの結果を導く 一流の男の演出力」など。
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