
大手コーヒーチェーンのスターバックスは、プラスチック製ストローの提供を徐々に減らして、2020年までに使用をやめると発表した。マクドナルドも英国とアイルランドの店舗でプラスチック製ストローを禁止する。米シアトルでは18年7月から使い捨てプラスチック製品の提供が禁じられた。米国だけで1日5億本が使われるという調査もあるストロー。ここまで浸透した歴史を、5つの出来事で解説しよう。
出来事1:130年前に特許出願
古代から、人々は細長い筒を使って飲み物を飲んでいた。5000年前にビールを醸造していた古代シュメール人は、貴金属でできた細長い筒を大きな壺に入れて、表面に浮いた発酵副産物の下にある液体を吸い上げて飲んでいた。
ナショジオが誕生した1888年、米国のマービン・ストーンという人物が、初めて飲用ストローの特許を申請した。スミソニアン協会の文献によると、1880年の夏のある暑い日、冷たいカクテルを飲んでいたところ、ストローとして使っていたライ麦の茎が型崩れしてしまった。たばこ用巻紙の製造会社を経営していたストーンは、自分ならもっといいものを作れるんじゃないかと思ったという。
早速、細長い紙を鉛筆に巻き付けて糊で貼り合わせ、紙製ストローの試作品を完成させた。1888年にこのデザインで特許を申請し、1890年には自分の工場で大量生産を始めた。
出来事2:曲がるストロー発明、病院から普及
曲がるストローが発明されたのは、1930年代に入ってからのことだ。自分の娘がまっすぐのストローからミルクシェイクをうまく飲めずに苦労しているのを見て、発明家のジョセフ・フリードマンにアイデアがひらめいた。ストローの中にネジを入れて、ネジの溝に合わせてデンタルフロスを巻き付け、その後ネジを取り出した。ネジの跡がついたストローは、破れることなく簡単に曲がった。フリードマンはこの発明で特許を申請し、フレックス・ストロー・カンパニーを設立した。
曲がるストローに最初に目を付けたのは、病院だった。これなら、患者はベッドに寝たまま飲み物を飲むことができる。その後炭酸飲料やミルクシェイクにも使われるようになり、数十年で曲がるストローは全米に広がっていった。
出来事3:大戦後、紙からプラスチック製が主流に
紙製ストローが盛んに使われていた頃、米国ではプラスチック製品の製造も始まろうとしていた。
1870年、ジョン・ウェスレー・ハイアットという米国人が、象牙など動物由来の素材に似せたセルロイドを使って、初めてのプラスチック製品を開発した。それ以来、家庭用品に使われるベークライト、ストッキングに使われるナイロン、軍用機に使われるアクリルなど、様々な合成樹脂が誕生した。
耐久性に優れていて安価なプラスチックは、第二次世界大戦中に軍事用に大量に製造された。サイエンス作家のスーザン・フリンケル氏は、著書『Plastic: A Toxic Love Story』の中で、戦時中にできたプラスチックの製造インフラが、製品の供給先を突然失ってしまったと書いている。そこでメーカーは、当時成長著しかった「安価な消費財」の市場に目を向けた。戦時中の倹約生活から解放された国民は、より安いものをより多く求めていた。