チケットは即完売 「へりくつ漫才」和牛の目指す先
若手芸人の中で「今、最もチケットを取りにくい」といわれる和牛。神経質な人物を演じる水田と、その言動に翻弄される立場の川西という構図の漫才が持ち味だ。「M-1グランプリ」は2016、17年と2年連続で準優勝。単独ライブのチケットは即完が相次ぐ。その原動力とは――。
和牛は大阪を拠点に活動してきたが、全国区の仕事が増えたこともあり、約1年前に東京に進出。いまやテレビのみならず、企業の新商品イベントや映画のPR会見などにも引っ張りだこだ。
結成は06年。共に吉本総合芸能学院(NSC)出身で、卒業後に相方を探していた2人が、同期のバイク川崎バイクの紹介によりコンビを組むことになった。結成当初の目標は「『M-1』に出ること」(水田)。「周りの芸人も全員そういうモチベーションでやってました」(川西)
お互いの第一印象は、「水田君はキリッとした、いかにも料理人(水田の前職)という感じ。上下がつながったヒゲを生やしていました」(川西)。「川西君は、いい育ち方をした優しい子という印象。今とそんなに変わらないです」(水田)
解散の危機は1度だけあった。「自分が主催するトークライブに寝坊して遅刻したのが会社のお偉いさんにバレて、無期限の謹慎になったんです。そのせいで相方も漫才ができなくなったんで、申し訳ないから解散してもいいよって自分から伝えました」(水田)
その後、すでに開催が決まっていた単独ライブだけはやらせてもらえることになり、その成果を映像で見せたところ、謹慎は50日間で解けた。
目標だった「M-1」で2年連続準優勝し、誰もが実力を認める2人だが、スランプも経験。「賞レースで結果が出なくて一番伸び悩んでいたのが12年ごろでした」(川西)。「他の人がやっていないことをやらないと、埋もれてしまうことに気付いたんです」(水田)
そこで自分たちの個性をネタに盛り込み、できあがったのが彼らの代名詞「へりくつ漫才」だ。細かいことが気になり、重箱の隅をつつくような理屈ばかりを言う水田と、困りながらも丁寧に対応する川西。コントラストが効いたこの漫才は、「THE MANZAI 2014」の決勝で大きな反響があった。ここで手応えを感じてからは、「自分たちじゃないと言わないようなことを重視してます」(水田)
昨年は初の全国ツアー「和牛がチャンピオンになるための全国ツアー!!」を実施したが、「『M-1』で優勝することを意識しすぎて楽しむ余裕がなかった」(川西)という反省も。「今年はお客さんと一緒に楽しみたいと思い、ツアータイトルを『ホールでみんなで騒ごやないか!』にしました(笑)」(水田)
目指すのは「漫才面白いなって言われる芸人」と水田。「活動の中心が漫才、という形にしておきたい」と続けると、川西も「漫才がしっかりしていれば他の仕事もビビらずできる」と応じた。
(「日経エンタテインメント!」7月号の記事を再構成 文/遠藤敏文 写真/中村嘉昭)
[日経MJ2018年7月13日付]
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