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池袋・川口…ミニ中華街が続々 共生の一歩は太極拳? 中国からの移住者住みつく、店舗も集積

2018/8/8 日本経済新聞 夕刊

一方、芝園団地でも住民の高齢化が進み空き室が目立つようになり、入居に際して保証人などは不要で国籍の制限は無いといった利点が中国人の間で口コミで広がっていった。西川口駅などからはJR池袋駅や上野駅まで電車で20分前後と交通の便が良いことも支持されているようだ。

JR西川口駅の周辺では、増え続ける中国人向けに本場の料理を提供する飲食店が増えている(西川口駅前の大通り)

日本の中華街に詳しい立正大学の山下清海教授は「新しいタイプの中華街が郊外に広がっている」という。中国では78年に改革開放路線を打ち出して以降、海外に移る人々が増えた。古くからある日本の中華街で暮らす華僑とは異なり、「新華僑」と呼ばれるこれらの人々が働き暮らす場所を求めたのが東京・池袋だ。川口同様に風俗店の摘発の後に生じた空きビルなどで、90年代ごろから中国人向けの飲食店や中国人が集住する場所が増えた。

その後も日本で暮らす中国人は増え続けた。17年末で73万人となり、10年間で2割以上増加。子ども連れや両親帯同で日本で暮らすといったケースが増えており、繁華街の池袋に比べ家族で過ごしやすい川口が選ばれているようだ。山下教授によると東京・亀戸や大阪・西成地区などでも新華僑が経営する飲食店が増えており、周辺で川口のように中国人が集まって暮らす地域が出てくる可能性もある。

■ごみ分別や騒音でトラブルも

川口では増え続ける中国人と以前から暮らす日本人との間でトラブルも起きている。顕著なのが「ごみの分別」と「騒音」問題だ。分別をきちんとしないままごみを捨てたり、夜間にもかかわらず大声で騒いだりといった苦情が昔からある。芝園団地自治会の韮沢勝司会長は「文化の違いがあるほか日本語が分からない人も多く、すぐさま解決できる問題ではない」と打ち明ける。

ただ自治会は中国人住人に参加を呼びかけ、現在30世帯ほどだが加入して協力する中国人住人も出てきた。月に一度の頻度で多文化交流の行事も開催。6月には太極拳を学ぶイベントを開き、日本人と中国人がほぼ半分ずつ約20人が参加し団地の広場で汗を流した。川口市も中国人住民の相談に中国語で応じる「国際交流員」を2人置き対応するなど、中国人住人と共生を図る取り組みは一歩一歩進んでいる。

総務省が7月11日に発表した人口動態調査では、今年1月1日時点の日本で暮らす外国人は249万7千人となり過去最高を更新した。日本社会を支える働き手としての外国人の存在感が高まっており、今後も増える可能性がある。

芝園団地のある日本人住人は「もう国籍なんて関係ない。住んでくれるならありがたいし、一緒にやっていくのが一番」と話す。川口での中国人との共生の取り組みは、外国人を迎える日本社会の一つの先行事例となるかもしれない。

(川上尚志)

[日本経済新聞夕刊2018年7月18日付]

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