首都圏で「ミニ中華街」が増えている。もともと横浜、神戸、長崎が「三大中華街」として知られるが、東京都の池袋、さらに最近では埼玉県の川口市が新しい中華街として発展してきた。「三大」と異なるのは観光地化されず、中国人向けの物販・サービスが集積し、中国語が公用語のような場所が増えている点だ。住民としての中国人の存在感が高まるなか、共生を図る動きも生まれている。
「ここは便利だと聞いて、1カ月前に引っ越してきたの」。7月上旬に川口市にある「芝園団地」を訪ねると、子どもをベビーカーに乗せて散歩していた中国人女性の住民がそう答えた。団地の真ん中にある広場では昼下がり、子連れの女性やベンチでくつろぐお年寄りの姿が目立つ。その多くが中国人の住民だ。
芝園団地は40年前の1978年に建築された。15棟があり約2450世帯、4750人ほどが暮らす。17年、中国人の住民が全体の半分を超えた。団地の自治会によると、IT(情報技術)会社に勤める30代男性の中国人が目立ち、両親を招き一緒に暮らす例も多いという。団地内には中国人の子どもを預かる保育園もあり、団地の貼り紙も日本語と中国語で表記される。
川口市では、ここ十年ほどで急速に中国人の住民が増えている。今年4月時点の中国籍住民は1万9719人。市の人口の3%強を占める。ベトナムや韓国籍の住民もいるが、中国籍の住民が圧倒的に多い。芝園団地のほかに、市内を通過するJR京浜東北線の西川口駅や川口駅の周辺に暮らすケースが目立つ。
牛肉麺、火鍋、米線――。西川口などの駅前では、中国語で書かれたメニューを掲げる中国料理店も増えている。たいていの店が中国人による経営で、日本語でもメニューを提供するが、店内は中国語の掲示が目立ち飛び交う言葉は中国語が大半だ。中国の様々な地方の「本場」の料理や雰囲気を味わうことができるため、一種の「観光スポット」にもなりつつある。
池袋、亀戸などにも「新華僑」
川口市で中国人の住民が増えた背景の一つは、家賃が相対的に安い点がある。西川口駅周辺は風俗店が多かったが、埼玉県警が摘発を進めた結果、06年ごろから空きビルが目立つようになった。周辺の家賃水準は下がり中国人が集まって暮らすようになった。