人生の選択肢が多過ぎて決められません
脚本家、大石静さん
営業職がつらくて事務職に転職して4カ月。残業が多く辞めたいです。ただ、辞めた後どうしたらいいか自分の気持ちがわからず不安です。公務員試験や英語の勉強の期間を設けることも考えましたが、決断できません。結婚・出産で幸せな人や、仕事は割り切って私生活を楽しむ人、夢に向かって挑戦する人……。人生の選択肢が多過ぎ、どうしたら自分の人生が充実するのかわかりません。(埼玉県、女性、20代)
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やさしい言葉で励ましたいですが、言葉が見つかりません。
誰に聞いても答えは同じだと思いますが、あなたはとんでもない甘ったれですね。
会社にもこの世にもパラダイスはないのです。営業もイヤ、事務もイヤ。それならどこに行っても不満ですよ、きっと。
公務員試験に受かっても、仕事は地味だし、厳しいでしょう。専業主婦もきちんとやれば、限りなくやることはありますし、妊娠、出産、子育ては、ただごとではない責任のある仕事です。
夢に向かって羽ばたいたサッカー・ワールドカップの代表選手を見てください。血へどをはくような努力をし、試練を乗り越えています。華やかな俳優、ノーベル賞の学者、漫画家、みな影でどれだけのつらい努力をしているか、ちょっと想像してみたらわかるでしょう。
私は何の宗教も信じてはいませんが、仏教における「現世は修行の場」という言葉は、言い得て妙だと思います。
ステキなこと、楽な暮らしは、転がっていないのです。不満を言う前に、今いる場所で全力を投入してみたらどうですか。営業職がイヤで事務職に転職したなら、もう退路はないと思って、精いっぱいやることです。
それができなければ、何をやっても常に不満で、不幸な気分で生きることになるでしょう。
そもそも誰の人生もそんなに楽しいものではないのですよ。
苦しいこと、辛いこと、悲しいこと、悔しいことの合間に、ちょっとだけ楽しいことがあるだけです。だからこそ、楽しいことには価値があるのです。
確かに今の世の中は情報があふれており、今いる場所よりステキな場所が、他にありそうに見えるのでしょうが、今いる場所で努力できなければ、どこに行ってもダメだと肝に銘じてください。
その覚悟が決まれば、不満からも解放されますし、心は楽になるはずです。
今いる場で努力できれば、次なる道も必ず見えて来ると、私は確信します。
[NIKKEIプラス1 2018年7月14日付]
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