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うまいペペロンチーノを作りたい 書斎派求道者の挑戦男のパスタ道(1)

パスタづくりでは小麦にもこだわる

本書の執筆をはじめてから、私はちょっと自虐的に「書斎派パスタ求道者」を名乗っている。家にこもり、さまざまな文献・論文を読み、理解したことをもとに仮説を立て、キッチンで実験し、試食し、調理法を改善し、疑問が生じればさらに論文をあさる。こうしたことを延々と行っていたからだ。

はたから見れば、どうでもいいような実験をくり返している。塩の量でパスタの歯ごたえがどう変わるか、という実験はもちろん、パスタを水からゆでるとどうなるか?電子レンジでチンは無理なのか?スパゲティなどのロングパスタはどうの程度の長さが食べやすいのか?昔の南イタリア庶民のようにパスタを手で食べるとどんな気持ちがするのか?など、おそらく世のパスタ好きでもやっていないような奇妙な実験もやっている。

しかし、いくつかの実験からは大きな収穫もあった。

例えば、パスタの原料であるデュラム小麦からタンパク質とデンプンを取りだして、それぞれゆで、何が起きているのかを観察した。その過程で、麺の食感について、そしてコシとアルデンテの違いについて明確に再定義できた。

ゆでるという行為ひとつとっても、それを理解するには科学的なアプローチが不可欠だ。実験をくり返すなかで、インターネット上の記述だけでなく、パスタに関する本やプロであるシェフたちの解説にも間違いが多く、料理の世界がいまもさまざまな迷信にとらわれていることを思い知った(加えて言えば、私自身が過去に書いたインターネット上の記事にも、訂正・加筆が必要なことが判明した)。

この本には、既存の「パスタ本」に載っていないことが、たくさん書いてある。特に最後に記したペペロンチーノのレシピは、これまで書かれてきたものとはまったく違う新しいものであると自負している。

ゆで方についても、ものすごく細かな部分までいちいち検証することで、多くの迷信を吹き飛ばすことができたと思う。まだ、仮説の部分もあり、精度の高い機械で専門家によって検証してもらう必要はあるが、パスタ愛好家同士のさまざまな議論に対する最終回答に近いところまでいったのではないだろうか。

ただし、なにしろ実験環境は家のキッチンである。結果がほかの要因に左右されていたり、素人である私の解釈が間違っている場合もあるだろう。それでも間違いを恐れずに自分なりの結論を出してみた。

専門家の論文でさえ、ほかの研究者の追試をへて、ようやく認められていく。読者の皆さんも、ぜひ本書の実験を追試してもらいたい。そして、間違いがあったら連絡してほしい。それがくり返されてレシピが修正されれば、パスタ愛好家の力で日本のパスタはどんどんおいしくなっていく。それこそが、私の望みである。

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