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ソプラノ佐藤美枝子 優勝20周年に聴かせる歌の花

2018/7/21

10月1日には「佐藤美枝子チャイコフスキー国際コンクール優勝20周年記念リサイタル」を紀尾井ホール(東京・千代田)で開く。河原忠之氏のピアノ共演で、前半はチャイコフスキーの歌曲とオペラ「エフゲニー・オネーギン」の「手紙の場」。後半は彼女ならではのオペラの名場面を並べながら、ついには「ルチア」のクライマックスである「狂乱の場」へと至るプログラムだ。「20年の歳月の中で成長してきた歌を聴いてもらいたい」と記念公演に向けて抱負を語る。特に「狂乱の場」では、速いフレーズに装飾を施して歌うコロラトゥーラという持ち前の超絶技巧を聴けそうだ。

ハイライト版「幻想のルチア」を日本各地で上演

恋人エドガルドとの仲を兄に裂かれて狂乱へと至る悲劇のヒロイン、ルチア役は彼女が属する藤原歌劇団の公演で好評を博してきた。「ルチアを歌ったのは本公演では10回くらい」と言う。案外少ない気もするが、実は「ルチア」のハイライト版といえる岩田達宗氏の演出による「幻想のルチア」という作品がある。「ルチア歌い」の佐藤さんの魅力を最大限に引き出すために、彼女のために特別に編集された作品だ。

「ルチア」を歌うのが日課のソプラノ佐藤美枝子さん(6月6日、都内)

「幻想のルチア」では「日本各地を巡演しているので、かなりの回数を歌っている」。岩田氏の演出ではナレーションが加わり、エドガルドの回想として始まる。「分かりやすい展開になっている。ルチア役は歌いっぱなしになるので大変だが、多くの人たちに親しんでもらえるのでやりがいがある」と話す。「毎朝アリアを歌って発声練習をしている」と言うほど「ルチア」は彼女の日課にもなっている。

「優勝から20年たって年を重ねた分、声も厚みを増した」と自らの歌唱の変化を分析する。軽快で優美なレッジェーロという定評のある歌い方に加え、今では重みと深みのある歌声も体得した。これに伴いレパートリーも拡大させている。

「ルチア」のような悲劇だけでなく、喜劇の役柄でも評価を高めてきた。「私自身は悲劇が合うと思っているが、もともとの私の性格を知っている人からは『コメディーだよね』と言われる。確かに喜劇ではわりと自分をつくらずに演じることができる。体力面では喜劇のほうが大変だけど、自分の中からわき出てくるものがある」。これからはロッシーニやドニゼッティの喜劇も彼女の重要な役柄になっていきそうだ。

一方で佐藤さんの大事なレパートリーとして、コンクールにその名を冠したチャイコフスキーの歌曲やオペラもある。「チャイコフスキーの歌はロシア語。イタリア歌曲のように当たり前に歌うのは難しい」ようだ。「ロシア語には曖昧な母音がいくつかあり、舌の使い方や声の曇らせ方などは、ロシア人に付いて発声法を習っている」と言う。

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