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ワイン酵母・焼き肉向け… 埼玉・釜屋が挑む新しい酒 ぶらり日本酒蔵めぐり(2)

2018/7/17

創業270周年を迎えた釜屋 金賞受賞酒を手に立つ小森順一社長

 今年、創業270周年を迎えた酒蔵、釜屋(埼玉県加須市)が変貌しつつある。主力の「力士」以外に続々とブランドを市場に投入している。狙いは地酒ファンを増やすこと。どこの食卓にも当たり前に日本酒がのぼっていた時代、1升瓶換算で100万本以上を生産していた蔵が、「わざわざ選んでもらえる酒」造りに挑む。

 釜屋は埼玉県北東部の、利根川と荒川に挟まれた穀倉地帯で酒を醸してきた。宅地開発が進んだ今でも、加須市内のところどころで水田が広がる。食用米の産地として県内有数の加須市で酒米生産の取り組みが始まったのは5年前のこと。今年6月には10人余りの生産者が酒米を田植えした。

 生産する品種は昨年、埼玉県の産地品種銘柄とされた「五百万石」が中心。銘柄指定を目指す「山田錦」と、埼玉県が開発した「さけ武蔵」も栽培する。今年は作付けを大幅に増やしたという。酒米を生産する機運が地元で盛り上がってきたのに呼応してできたのが、販売中の「純米吟醸 加須の舞」だ。

 2017~18年の仕込み(平成29酒造年度)から原料米を100%、加須産の五百万石に切り替えた。「地元のコメを地元の蔵が造り地元の酒屋が売る、という形にしたかった」と、社長の小森順一さんは話す。試験醸造をするうちに地元産米への信頼度が高まったようだ。

「次の仕込み(2018~19年)では、原料米は地元産が8割を占めるようになる」という。前年度に比べて、原料米に占める地元産米の比率は倍増し、「加須の舞」以外の銘柄にも使用が広がる。

「一九九四年醸造 特別本醸造 釜屋」 古酒は時間が味をつくる

 このところ、釜屋の商品ラインアップには毎年のように新顔が登場している。今年から加わった「一九九四年醸造 特別本醸造 釜屋」は24年間、常温のままタンク内で熟成した古酒だ。数種類ある古酒を毎年、社内でテイスティングする中で商品化が決まった。

 容量は200ミリリットルと少なく、ラベルは金色に輝く。「贈答需要を狙った」と小森さん。日本酒の古酒への関心は一部で高まり、酒蔵がヒット商品を狙う分野の一つとなっている。ただ、独特の匂いやえぐみをあえて強調する、個性的な酒が少なくない。小森さんは「クセが強いという、古酒に対してできつつある固定観念とは違うものを出したかった」と強調する。

 薄い琥珀(こはく)色だが、口にすると軽快に感じる。まろやかな風味で深い熟成を感じさせるが、飲む者を拒絶する嫌みはない。スモークチーズやナッツ類はもちろん、白カビチーズも合いそう。食後酒としてのポテンシャルを感じさせる。日本酒を楽しむシーンを広げそうな酒だ。

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