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安田秀一ドーム会長。CEO(最高経営責任者)も兼務する

安田秀一ドーム会長。CEO(最高経営責任者)も兼務する

2020年の東京五輪を控え、スポーツ産業の活性化に注目が集まる一方、日本大学アメリカンフットボール部のタックル事件など不祥事が相次いでいる。法政大学アメフト部総監督の経験もあり、スポーツ庁で大学スポーツ改革の委員会にも参加する安田秀一氏(米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店であるドームの会長)に、日本のスポーツ組織に潜む構造問題を聞いた。

ボタンの掛け違いに気づいていない

――日大の問題について、どうみていますか。

「日本社会が抱える課題の縮図だと思っています。最近明るみに出た官僚の不祥事をみても、ごまかすことや威圧して押し切ることがまかり通っている。場当たり的な対応ばかりでボタンの1個目から掛け違えていることに気付いていません。日大の問題でいうと、まず大学スポーツのガバナンス(統治)が確立されていないことが根本的な問題です。何か不祥事があると監督が辞めるとか練習を規制するとか、ルールがよくわからないまま対処してしまう。ガバナンス欠如によるクライシス(危機)です。米国に大学スポーツ運営の手本があるのに、きちんと勉強している人は非常に少ない」

――米国の手本とは。

「青少年スポーツの国際比較をすると、欧州はクラブスポーツ型で、部活というものが存在しません。地域のスポーツクラブに古い歴史があり、学校が終わったら参加する。各クラブチームは公共財とみなされ、基本的に免税組織です。最近ではクラブのサッカーなどに参加すると学校の体育授業の単位がとれたりして、地域と学校が連携しています。一方、米国は学校スポーツ型で、日本はこれに倣ってきたという歴史があります。つまり学校の部活です」

「しかし日米で大きな違いがあります。米国は学校の正式な教育プログラムの一環にしているのに対し、日本は課外活動にしています。学校の管轄外なのに学校の中でやっている、ここが一番の問題なんです。実は米国も110年前までは課外活動でした。大学のアメフト試合は人気の過熱とともにプレーの激しさがエスカレートし、死者まで発生してしまった。これを問題視して1906年に設立されたのがNCAA(全米大学体育協会)です」

――NCAA設立で何が変わったのでしょうか。

「部活を大学の課外活動ではなく、正規のプログラムにしました。スポーツは教育に資するという考え方です。大学が施設や試合などの管理や選手の安全管理もしながら教育として昇華させました。そして学生は大学を代表して戦い、スポーツを通じてリーダーシップなどを学び成長する。大学のブランドイメージも上がり、受験したいという学生も増える。最終的には興行という付加価値になり、数兆円という巨大産業になりました」

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