「貿易戦争」 中国ショックは再来するか(武者陵司)武者リサーチ代表

写真はイメージ=123RF
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「トランプ政権の対中要求が過激なのは覇権争いが根源にあるからだ」

米国のトランプ政権が仕掛けた中国に対する「貿易戦争」が市場を揺るがしている。7月6日、米国は中国の知的財産権侵害を理由に340億ドル分の輸入品に25%の追加関税を発動し、中国も同規模の報復関税を導入した。

さらに米国は同月10日に2000億ドル分の輸入品に10%の追加関税を課すと発表した。発動は9月以降になる見通しで、米中の報復の応酬に結び付けば世界経済が想像を超えるダメージを被る可能性も完全には排除できない。市場で不安心理が高まるのは当然である。

中国市場では株安と通貨安が共振する兆しが出ている。2015年夏から16年初めの相場急落「チャイナ・ショック」をほうふつとさせ、その再来が懸念されている。しかし、今回と15年には決定的な相違があり、深刻な市場混乱や経済悪化は回避されるだろう。

中国のファンダメンタルズは堅調

第1は中国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は堅調であることだ。15年の中国経済は不動産開発投資、鉄道貨物輸送量、粗鋼生産量、発電量などの経済指標がすべて前年比でマイナスに転じるという経済悪化があったが、今回はいずれもプラス圏となっている。当局の対応も素早い。中国人民銀行(中央銀行)がすかさず預金準備率を0.5%引き下げたのは、危機意識の高まりと推察される。

第2は資本コントロールが利いていることだ。中国の外貨準備高は15年に急減した後、16年後半からは2年近くにわたって3.1兆ドル前後を維持している。危機に対応した経済対策と厳格な資本コントロールの導入により、外貨不安と人民元安の懸念は封印されている。危機管理の学習効果は十分に生かされているといえよう。

市場では「中国は人民元安を貿易摩擦の対抗策として活用しようとしている」との臆測があるが、それはないだろう。通貨安は容易に危機の引き金になり得ること、また、通貨安政策は米国の怒りを強め、交渉上著しく不利になることが明らかである。人民銀の易綱総裁は「中国は人民元の引き下げという手段で貿易紛争に対応することはない」と言明している。

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