ながら聴きオーディオは本当に使える? 専門家が検証
肩掛けスピーカー・パイプ伝送式&骨伝導式イヤホン
少し前まで、音楽用のイヤホン開発は周囲の雑音をいかにカットするかが課題だった。ところが2017年から、逆に周りの音が聞こえることを売りにしたイヤホンやヘッドホンが続々と登場。家庭や職場で日常的に使えると人気を集めている。周りの音がどれだけ聞こえるか、音漏れはどれだけあるのかが気になるところだ。今回は、オーディオ・ビジュアル評論家の折原一也氏の協力を得て、計8製品で、音質や装着感も含めて聞こえ方をテストした。
密閉度の高い通常のヘッドホンは、音楽鑑賞中に声をかけられてもまず気づかない。歩行中やスポーツのときに大音量で使うと、自動車のエンジン音などが聞こえず危険でもある。一方「ながら聴き」オーディオ製品は、周りの音と音楽が同時に聞こえるので、作業や会話をしながら音楽が楽しめる。また、密閉度の高いイヤホンの多くは、食事やジョギングのときに使うと、衝撃が耳の中で響くが、ながら聴きオーディオならそのような不快感もない。「密閉型のイヤホンやヘッドホンを持つ人が、2本目として購入するケースも多い」(イヤホン・ヘッドホン専門店のe☆イヤホン)。
「ながら聴き」ができる製品には大きく、肩掛けスピーカー、パイプ伝送式、骨伝導式の3種類がある。
肩掛けスピーカーは、主にテレビ音声の臨場感を増す目的で使われる。3月にバラエティー番組で紹介されて人気に火が付き、現在も一部の商品は品薄状態が続く。他の方式に比べて音漏れが大きいので、屋内での利用が前提になる。このなかで、周囲の音が最も聞き取りやすかったのは、ソニー「SRS-WS1」。形状や重さのバランスも良く、長時間装着しても疲れにくかった。ただしBluetoothに対応していないので、スマートフォンなどと無線接続したいなら、安価なハーマンインターナショナル「SOUNDGEAR BTA」などが候補になる。
骨伝導やパイプ伝送などの方式は、小型でジョギングなど運動中にも使えるのがメリット。周囲の音の聞き取りやすさはBoCo「earsopen BT-5」が最も良かったが、音漏れが大きめで音質や装着感が物足りなかった。音楽を聴く目的であれば、装着感の良いソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia Ear Duo」がベストといえる。今回は比較用に、開放型イヤホンでありながら「周囲の音が聞こえる」とうたう、Bang&Olufsen「EARSET」もテストしたが、普通の音量で音楽をかけると周りの音が聞こえにくくなった。
なお、ながら聴き対応製品でも、音量を上げ過ぎれば周りの音が聞こえにくくなる。特に仕事中に使う際には、少し小さめと感じる音量からスタートするとよさそうだ。
次ページから8製品の評価を一つずつ解説する。
肩掛けスピーカー、臨場感や装着感ではソニーがベスト
効果音や低音でリアルに振動、有線接続ならスマホもOK
バランスよく鳴っており、音の空間が最も広く感じられ、装着感も良好。肩掛けスピーカーのなかでは音漏れが大きめだが、周りの音は聞き取りやすい。低音を振動として体で感じられる機能があり、3段階で調節できる。
注)SRS-WS1は、無線で飛ばせるのがテレビの音声だけなので、携帯音楽プレーヤーと有線接続してテストした。なお、同製品は品薄傾向で、ソニーストアでは一時的に受注をストップしている。
テレビとBluetooth両対応、 周囲の音はやや聞こえにくい
少し後ろからに聞こえるが、ボーカルの音は鮮明。ただ、肩掛けスピーカー系では周りの音が最も聞こえづらかった。テレビ用Bluetooth送信機が付属しない低価格機「SOUNDGEAR」(実勢価格2万1470円・税込み)もある。
低音が強く音漏れが少なめ、本体は柔軟だが調節が必要
低音はパワーがあり、比較した3製品では最も音漏れが少なかった。本体が柔らかく、装着位置を微調整できるが、ベストな聞こえ方をする位置を見つける手間がかかった。連続で12時間バッテリーが持つのは唯一。
イヤホン、聞こえやすさはBoCoが一歩リード
唯一の完全ワイヤレスで装着感と音質はベスト
中音域が厚くボーカルがクリアに聞こえ、音楽用イヤホンとして十分な音質。音漏れもBT-5に次いで少なく、外音の聞き取りやすさも標準的。完全ワイヤレスのため装着感は抜群で、運動してもずれる心配がない。
音質、聞こえやすさとも及第点、1万円台でコスパは高い
やや軽めの音質だが、ボーカルもよく聞こえ、音楽用として十分。イヤホン、ヘッドホン系では無線伝送の遅延が最も少なかった。音漏れや、外音の聞こえやすさは標準的。装着に慣れは必要だが、安価でコスパは高い。
音質と装着感は申し分ないが、周囲の音は聞こえにくかった
通常の開放型だが、耳穴でなくアームで支える方式。ずれにくいメリットはあるが、周囲の音はあまり聞こえなかった。音の広がりや低音のパワーがあり、音質はソニーモバイルに並ぶ。音漏れは最も少なかった。
サングラスのような装着感、音がこもり気味になる傾向あり
骨伝導としては低音がよく鳴っているが、少しこもった感じになり、広がりも少ない。音漏れや外音の聞き取りやすさは標準レベル。サングラスのように耳に引っ掛けるだけでよく、気軽に着脱できるのはメリット。
骨伝導ではベストの音質、外音は聞きやすいが音漏れ大
TREKZ AIRよりも音がクリアで、低音も耳たぶからよく伝わってくる。周囲の音はこのページの5製品で最も聞き取りやすかったが、音漏れが大きめだった。耳たぶをクリップのような部品で挟むのは慣れが必要。
[日経トレンディ2018年8月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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