BAが広めている「インディペンデントシール」。消費者が売り場で「どのビールがクラフトブルワーがつくったビールか」が識別できるようになる

WBC、CBC、そしてブルーエクスポを主催するBAは、「米国のクラフトブルワー、彼らのビール、そして熱心な醸造コミュニティーの保護と振興」を目的に設立された。取り組みとしては今回のような審査会開催、各種セミナーや教育コンテンツの提供、ビールフェスティバルの開催のほか、業界団体としてのロビー活動もある。

ロビー活動に関しては、BAのボブ・ピース会長がCBCの基調講演で「BA史上最大の勝利」と言ったのが減税である。2017年12月20日に米国議会で、ビールやワイン、蒸留酒のメーカーに対する連邦消費税を減税する法案が通過した。

ビールでは、年間製造量200万バレル(1バレルは約117リットル)以下のブルワリーの最初の6万バレル分の連邦消費税を1バレル当たり7ドルから3.5ドルに、年間製造量が200万バレルを超えるブルワリーは最初の6万バレル分の連邦消費税を1バレル当たり18ドルから16ドルになる。

BAはこの法案を通過させるために、国会議員にロビー活動を展開し、クラフトビール業界で働く人や消費者に向けて「どの議員が減税に賛成しているか」といった情報を提供し、投票につなげる草の根活動も促していった。現実的な影響力を持つ業界団体なのだ。

このロビー活動の前提となっているのが、クラフトブルワー(クラフトビールの作り手)とは何なのかということだ。BAはクラフトブルワーを、製造量、経営の独立性、原料の伝統性という3つの基準で定義している。この定義があるからこそ、誰がBAの保護・振興の対象であり、減税すべき存在であるのかが分かり、ロビー活動が進められる。

しかし、BAは2017年に入ったころから、情報発信の際「Craft」ではなく「Small and Independent」という言葉を多用するようになった。CBCの中で開催されたBAの記者発表でピース会長にこの理由を聞くと、「『Craft』は主観的なもの、『Small and Independent』は客観的なもの」という明快な答えが返ってきた。言葉が普及した背景を考えたらふさわしくない名前なのに自称する問題は、日本だけではなく米国でも起きているということだ。

BAのボブ・ピース会長

CBCは今回、3日間で100近いプログラムが提供され、世界各国のビール醸造関係者が約4万人参加した。中でも特に興味深いのが、毎回提供されるクラフトビール業界の各種データである。

米国には2017年末現在で、クラフトブルワリーの数は6266カ所で、2016年末の5424カ所から15.5%も増えた。一方で、165カ所のブルワリーが操業をやめた。いくら盛り上がっているとはいえ、ビジネスとしては競争なので、栄える者があれば敗れる者があるのだ。

満席となるセミナーが少なくなく、参加者の熱意が感じられた

そして全米のビールの販売量は約1億9628万バレルとなって前年比で1.2%減ったが、クラフトブルワーがつくるビールは約2487万バレルとなって前年比で5%も増えた。その数量ベースのシェアは12.7%、金額ベースで23.4%となった。日本では大手と言われる5社を除く、小規模ブルワリーによるビールの数量ベースのシェアが多くても1%くらいと言われるのを考えると、驚異的だ。

米国のクラフトビールとしてつくられるスタイルとして依然として多いのはIPAという、ホップの香りも苦味もよくきかせたビールだ。近年では、このIPAを実験台にして、さまざまなフルーツを入れたり、アルコール度数を低めたりと、派生したビールもつくられるようになってきた。そして本当に最近の傾向としてあるのが、「Juicy or Hazy」ビールだ。