米国のビールは色が淡くて味わいが軽い――。日本でも長らくそう言われてきたが、最近はむしろ、多様で濃い味わいの銘柄がたくさんあることも知られるようになったのではないか。それに貢献しているのが、どうやら小規模のブルワリー(ビール醸造所)がつくるクラフトビールのようだ。
しかし、筆者が4月から5月にかけて、出品数が世界最大のビール審査会、ワールドビアカップ(WBC:World Beer Cup)に、2016年に続いて審査員として渡米し、各種セミナーなどにも参加したところ、「色が淡くて味わいが軽いビール」が回帰し、再び注目を集めるのではないかという予想を聞くことができた。
WBCとは、米国の小規模ブルワリーの業界団体であるブルワーズアソシエーション(Brewers Association、BA)が主催するビール審査会のこと。ビールは101の部門に分かれて出品・審査され、各部門で金銀銅の賞が与えられる。出品するメーカーの国や規模に制限はない。いわば、世界一のビール銘柄を決める「ビールのオリンピック」だ。
1996年に第1回が開催されて以来、全米各地で毎偶数年に開催されている。第1回は20カ国の250ブルワリーから600銘柄が出品され、規模は右肩上がりに拡大。今回、テネシー州ナッシュビルで開催された第12回は、過去最高の66カ国・地域の2515ブルワリーから8234銘柄が出品された。
審査は4月28日から30日の3日間にわたって実施され、結果は5月3日夜(現地時間)に発表された。日本にも輸入されていて強さを見せたのが、米国のファイアーストーンウォーカー。1ブルワリーにつき4銘柄まで出品できる中、「C-ホップス」がアメリカンスタイルペールエールで金、「クリーキーボーンズ」がアメリカンスタイルサワーエールで銀、「スティーヴォ」がケラービアまたはツヴィッケルビア部門で金、「DBA」がオーディナリーまたはスペシャルビター部門で金と、ほぼ完璧といえる好成績を残した。
日本の銘柄は、南ドイツスタイルヘーフェヴァイツェン部門でコエドブルワリー(埼玉県)の「白」が銀賞、ゴールデンまたはブロンドエール部門で麗人酒造(長野県)の「信州浪漫ビール オリジナルエール」が銅賞を受賞した。

実はWCBでビールの審査が終わった後、5月1日から3日に開催されたクラフトブルワーズカンファレンス(CBC:Craft Brewers Conference)と見本市のブルーエクスポ(Brew Expo)が見逃せない。
CBCは、主にブルワー(ビール醸造者)向けのセミナーで多数のプログラムから構成されている。その内容は業界全体の動向から、政府が業界に与える影響、醸造技術、SNS(交流サイト)を活用したマーケティング方法などまで、実に多岐にわたる。ブルーエクスポと合わせて毎年開催され、WBCがある偶数年は、WBCと連続した日程で開催される。