「貿易戦争」と米株 暴落の歴史忘れるな(平山賢一)東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長

戦争末期に米国勝利の機運が高まると、米国株は急回復する一方、日本株は軟調で推移しました。日本が敗戦濃厚となる中で大暴落にならなかったのは日本証券取引所(東京株式取引所などが再編して発足)や政府機関などが株式の買い支えを実施していたことも主因の一つです。

いずれにしても歴史が証明するように、保護貿易はグローバル経済だけでなく、自国経済にもマイナスとなり、マーケットにも悪影響を与えます。自国産業を守るためとはいっても、報復合戦に発展するため、結局は全体としてダメージを受けてしまいます。このことは多くの経済学者も主張するところです。

現代はどうでしょう。トランプ政権の強硬姿勢が強まるにつれ、グローバル経済は不透明感が広がっています。鉄鋼やアルミニウムの追加関税などに対しEUや中国は対抗措置を導入し、報復合戦の様相を示しています。

貿易摩擦の強まりで中国株も下げ大きく

こうした状況下、米国株の上昇は頭打ちとなり、米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を見ると、関係者は2019年から20年にかけての利上げ打ち止めの可能性を示唆し始めています。

中国も利上げを持続することが困難になり始めているようです。中国人民銀行(中央銀行)は今年に入り、相次いで預金準備率を引き下げ、緩和姿勢を明確にしています。これは人民元を意図的に低めに誘導するためのもの、との見方があります。しかし、国内の経済成長を維持するためには、人民元レートを維持したくても利上げできないのが実情といえるでしょう。

つまり、膨張する政府および民間債務の負担から米国と同じように利上げしようにもできないのだと思われます。例えば、中国政府は累増する国営企業の債務を圧縮するために、債務の株式への転換を資金の貸し手である銀行に求めているほどなのです。

投資家はリスクに細心の注意が求められる

中国株も貿易摩擦が強まる中で、下げが大きくなりました。債務問題も加わって国内経済が変調するようだと、一段の下げもあるかもしれません。中国株の日本株との連動性は12年末以降は薄れていますが、それでも影響は避けられないでしょう。

もちろん、約80年前の貿易戦争のときのように世界が再び戦争の悲劇に突入するとは思えません。しかし、関税の報復合戦はどこかで落としどころを見つけないと国際関係に深刻な亀裂が生まれ、グローバル経済の大きな打撃になりかねません。

貿易摩擦が過激化したときの株価暴落の記憶を忘れるべきではないではありません。これ以上、事態を悪化させないためにも各国首脳の英知に期待したいところですが、今後は投資家もリスクに対しては細心の注意が求められそうです。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
平山賢一
東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長。1966年生まれ。横浜市立大学商学部卒業、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。89年大和証券投資信託委託入社、97年東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)入社、2001年に東京海上アセットマネジメント投信(現在の会社)に転籍。29年にわたり内外株式や債券を運用する。
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