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室伏広治さん 潜在パワー引き出す新聞紙エクササイズ

元ハンマー投げ選手の室伏広治さんに聞く(下)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

2004年のアテネ五輪で金メダル、2012年のロンドン五輪では銅メダル、2011年の陸上世界選手権・テグ大会では36歳という大会史上男子最年長での金メダルを獲得した、陸上界のレジェンド・室伏広治さん。四半世紀にわたり第一線で結果を出し続けた理由の一つに、室伏さんは「集中力」を挙げる。今回は自身の眠っているパワーを引き出し、集中力アップにもつながる室伏流エクササイズについて語ってもらう。

◇  ◇  ◇

私は36歳で出場した陸上の世界選手権・テグ大会で金メダルを、37歳で復活をかけて臨んだロンドン五輪で銅メダルを獲得し、2016年の41歳まで世界の第一線で戦ってきました。そうした結果を残せたのも、良き指導者に正しいトレーニング方法を教わってきたことと、これまでの概念にこだわらず柔軟に物事を考え、いかにして"今この瞬間"に力を最大限出し切ることができるかという研究を、徹底して重ねてきたからだと思います。そんな中で新たなトレーニング方法を考えてきました。

そのトレーニングとは「ハンマロビクス」という運動です。前回の記事「室伏広治さん 猫伸びストレッチで不眠知らず」でも紹介しましたが、ハンマーを振り子のように揺らしながら行うトレーニング法で、規則性のある"振り子運動"を行う中に潜む予測しづらい不規則な動きに、その場で瞬時に適応する力が養われます。

実際にやってみると、普段働いていない筋肉を呼び覚ますような感覚を覚え、集中しなければできない運動であることから集中力も磨かれました。このトレーニング法は、陸上男子100mで9秒98の日本記録を出した桐生祥秀選手をはじめとしたアスリートにも指導しています。今回は、そうしたハンマロビクスのコンセプトを反映した、誰でもできるエクササイズをいくつか紹介したいと思います。

新聞を最短で丸めて集中力を鍛える

1つ目が、毎朝、新聞を読み終わったら3分でできる「新聞紙エクササイズ」です。

まず、新聞紙の見開き1枚を、テーブルの上に広げます。女性であれば、新聞を破いて2分の1サイズにしてもいいでしょう。その上に片手を置き、新聞紙を片手だけで小さく丸めていきます。最初はゆっくりでも構いません。クシャクシャに丸めていって、最後には手の中に収まるまで小さくします。空中で新聞紙をたぐりよせるようなイメージです。

このときのポイントは、「どうしたら効率よく握りつぶせるのか」と考えながら手の中に収めていくことです。握る角度を変えたり、丸めやすいように持ち替えたり想像したりしながら、工夫して着実に小さく丸めていきます。目で見て、手全体で新聞紙の形を感じ取りながら、小さく丸めていく。そうすると、握力だけでなく手全体をコントロールせざるを得ないことから、様々な神経回路を使うことにもなります。

実際にやってみると意外に難しく、これまで手を自由に動かせると思っていても、自分自身の手がどれだけ不自由であったのかが分かるはずです。小さく丸めていく過程で、手が自由に動かないことにもどかしさを感じる方もいるかと思います。

腕まわりの筋肉を鍛えるつもりがなくても、新聞を丸めるという目的を達成した結果、腕がパンパンに張った状態になります。感覚が先に働いた結果、筋肉が鍛えられるのです。また、筋肉の存在さえ忘れてしまうぐらい集中するので、通常の筋トレより高度な運動だといえます。

武道などでも集中状態に入ると自分自身の体が消えたように感じるのだと聞いたことがありますが、メンタルと体が一体になるというこの感覚がとても大切だと私は思います。

単にハンドグリップを握るトレーニングを100回行っても、運動が惰性的になり、脳活動や身体感覚が運動中に多く関与するとは限りません。新聞を丸める運動は、運動と身体感覚が融合した状態になるので、"使える筋肉"を育て、人間の動きに直結する力になりやすいとも思うのです。

もちろん通常の筋トレなどを否定しませんし、筋肉を鍛えることは大事です。ですが、運動と身体感覚を分けるのでなく、自然と筋肉が鍛えられるようなトレーニングのほうが、運動能力を高めるために大切だと考えています。

例えば、歩くためのリハビリをするにしても、スクワットやレッグカールといった足の筋トレだけを行っても早い回復は見込めません。歩行中の8割以上は片足でバランスを取らなければならないことから、足の裏の感覚を改善させたり、全体重を片足で支えられるよう片足で着地した際の安定性を向上させたりしなければいけない。スムーズに歩行するには、まず身体感覚を向上させ、自分の体全体を片足で無意識な状態で支えることが必要であり、実際に歩くような動作のトレーニングが求められるでしょう。

話を戻しますと、この新聞紙を丸めるエクササイズは、私もたまにやりますが、一度たりとも新聞紙が同じ形にならず、何度やっても飽きがきません。このエクササイズに取り組んでいるときは、本当に集中します。

嫌なことがあれば、気持ちを切り替えるきっかけとして、新聞紙エクササイズを取り入れて、集中する時間を作るのもいいかもしれません。もちろん、新聞を読み終えたら1日1回丸めてみる習慣を持つこともお勧めします。

握力が弱くても大車輪ができるワケ

2つ目ですが、もしパートナーがいれば「手を引っ張り合うエクササイズ」を試してください。まず、パートナーと手をつないで互いに引っ張り合います。そのとき、何も考えないでやると、手だけの力で引っ張っていることを実感すると思います。相手が自分より力が強い人だと、踏ん張りきれずに引っ張られてしまうでしょう。

次に、肘を90度ピッタリに曲げてその形をキープします。このとき、力を入れる必要はありません。肘の90度の型を保ったまま、パートナーと手をつなぎ引っ張ってもらいます。すると、90度の角度を崩さないように踏ん張っていると、手だけではなく、おのずとおなかから下の下半身に力が入っていることを実感します。パートナーが自分より力が強く、体の大きい人であっても、不思議と踏ん張れる可能性が高くなります。

これは、自分から意識的に力を入れて引っ張り返そうとするなどの「能動的」な筋の使い方より、90度に肘を曲げて、その型を崩さないようにというイメージを持ちながら引っ張られたほうが、外部の力に応じて自然に現れる「受動的」な筋の使い方ができ、大きな力を発揮できるからです。

体操界のレジェンドである内村航平選手は、鉄棒で高難度の離れ技を連発し、握力が強いイメージですが、実はあるときに測定したら同じ年齢の人の平均より下回っていたと聞いたことがあります。手に力を入れなくても、指を曲げて鉄棒にひっかけるといった「受動的」な筋の使い方をすれば、弱い握力でも自身の体重の何倍もの力に耐えることができます。自ら力を入れようとすると、かえって大きな力を発揮できず、逆に「リラックスすれば大きな力が発揮できる」のにはこうした理由があるのです。

この手を引っ張り合うエクササイズも同じ原理であり、応用すれば日常の動作もちょっとしたエクササイズになります。例えば、ドアを開けるときに、手だけで取っ手をつかんでドアを開けるのではなく、肘を90度程度に曲げてそれを保ったまま、取っ手をつかんで腹や腰から引いて開けます。すると自然に腹筋や背筋、下半身といった体全体を使ってドアを開けようとします。

また、目の前のテーブルの上にコーヒーカップを置きます。座りながらそのカップを肘の曲げ伸ばしだけで取ろうとするのではなく、腕の角度を一定に保つようにして腹腰を意識し、その型を維持したままカップを取ろうとしてみてください。すると、腹のあたりから身を乗り出して全身を使ってカップに近づいていくような動きになります。

このように日常の何気ない動き一つひとつを、手や腕といった体の枝葉部分だけで済ませるのではなく、体全体を使って行うように意識すれば、全身運動になります(もともと枝葉部分である腕は、腹、腰、下半身の筋力に比べればはるかに弱いのです)。自分のイメージ(理想)通りに体を動かすには、全身を使って全力を出し切る練習をすることが大事だと私は考えています。指先を伸ばすときでも、小手先だけでやらずに全身を使う。ここで紹介したエクササイズには、こうした目的も含まれています。

もっと自分の体の動きに興味を持とう!

現役生活の終盤は、年齢による筋力やスピードの衰えと向き合い、ケガを予防するための工夫に注力していました。その結果、「脊椎や関節への負担を最小限にとどめ、効率よく体を強化して成果を出すにはどうするか」という研究につながりました。

引退後は、デスクワークや会議が多い生活になり、とにかく時間がないので、短時間で効率よく運動するといった競技者時代の考え方がとても役に立っています。ジムやジョギングに出られなくても、手軽で身近な運動で健康な体は作れると思っていますし、体の動きのメカニズムなどを考えながら新しいエクササイズを生み出すのは楽しく、何より飽きません。

"運動する"というと、何か特別に準備をして行うことだと思っている人も多いかもしれませんが、自分を追い込むような体の負担が大きい運動でなくても構わないと思います。

運動の習慣がない人は、まずはベッドから立ち上がるときに、「膝を意識しながら立って、次はおなかを意識して立ち上がってみよう」「その次はお尻を意識して立ち、どの部分に意識を持ったときが一番ラクに立てたか比べてみよう」などと、日常生活の動きの中で"自身の体に意識を向けること"から始めてみるといいかもしれません。今まで気づかなかった面白い発見があり、自分の体にもっと興味が湧いて、運動習慣も身に付きやすくなると思います。

(ライター 高島三幸、カメラマン 鈴木愛子)

室伏広治さん
 元男子ハンマー投げ選手。1974年生まれ。現役中の2008年に中京大学大学院修了後、博士号(体育学)取得。中京大学准教授を経て、2014年東京医科歯科大学教授。2001年世界陸上エドモントン大会で銀メダル、2004年アテネ五輪で金メダル、2011年世界陸上テグ大会で金メダル、ロンドン五輪では銅メダルを獲得。4大会連続で五輪に出場。日本陸上競技選手権大会20連覇。自己最高記録は2003年6月プラハ国際で記録した84m86(アジア記録、世界歴代4位)。著書に『ゾーンの入り方』(集英社新書)など。

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