球場へGO! 「海の家」やリビングでゆったり観戦

2018/7/18

オリパラSelect

首都圏の野球場が米国流の「ボールパーク」を目指し、球場内外のエンターテインメント性を高める取り組みを広げている。試合だけでなく球場という空間自体を楽しめる工夫をこらし、熱心な野球ファン以外にも足を運んでもらう。テレビやネット配信では味わえない楽しさを演出し、来場者を増やす。

「きれいになったなあ!。本当に変わった」。プロ野球・横浜DeNAの本拠地、横浜スタジアム(横浜市)を今シーズン訪れた観客たちは、ここ数年で様変わりした球場の風景を喜ぶ。

特に目立つのはユニークな座席の数々だ。「自宅のリビング」を意識したボックス席は靴を脱いで上がり、床に座ったり寝転んだりしながら観戦できる。団体向けの座席には10リットルのビアサーバーを設けた。

東京都内の会社から同僚6人で訪れた杉田浩介さん(43)は「おいしいビールが付いているのがいい。勝っても負けても楽しい」と話す。球団オリジナルビールも3種類を楽しめる。

球場の改修やチームの好成績を追い風に、主催試合の入場者はこの5年間で4割近く増加。今季の客席稼働率は96%(6月末)に達する。1978年の開場時から通う西村淳司さん(56)も「昔はがら空きだったのに、いまはチケットが取れない」と驚く。

千葉ロッテの本拠地、ZOZOマリンスタジアム(千葉市)には今年、「海の家」が登場した。一塁側の内野スタンドに設置した約20平方メートルの個室は青と白を基調とした内装で、壁にはサーフボードや貝殻を飾り付けた。野球場らしくない見栄えにこだわり、インスタグラムなど交流サイト(SNS)を利用する若い女性層を呼び込む。

場内のアミューズメントコーナーでは、今季はクレーンゲーム機を20台以上設置。景品には公式ショップで扱っていないグッズも扱う。夏は球場外に子供向けの水遊び場を設け「球場に何度も足を運びたくなる」(担当者)工夫をこらす。

埼玉西武は6月、2021年春の完成を目指し、メットライフドーム(埼玉県所沢市)の改修工事を始めた。総事業費は約180億円。

法人向けの年間ボックスシートの地下部分を掘り下げ、ネット裏からフィールドを見渡せるVIPラウンジを新設する。空調が効いた空間で食事しながら観戦してもらい、新たな客層を呼び込む。3階建てオフィス棟も建設する。

家族連れの施設も充実させる。約1000平方メートルの広場を整備して遊具を置くほか、イベント向けの多目的スペースも設ける。子どもが試合観戦以外にも楽しめる「こども広場」を設け、子育て世帯が過ごしやすい環境づくりを進める。

「子どもが生まれたら来シーズンはあまり観戦に来られないかも」。来場者からそんな声を聞いたのをきっかけに、現在も、おままごとや球団オリジナルの野球盤などで遊べる場所のほか、乳幼児連れ対象の休憩室や保護者がくつろげるカフェスペースを備えている。

人が年中集う場に

スポーツ庁と経済産業省が昨年まとめた冊子によると、ボールパークの先進事例の1つが米サンディエゴの倉庫街を再開発した「ペトコパーク」(2004年開場)。レンガ造りのビルをスタンドの一部に取り込み、レストランなどを整備。センター後方に芝生の遊び場を設け、ピクニックがてら一日中楽しめるのが売り物だ。

セ・リーグの観客動員が17年に初めて1400万人を突破し、プロ野球の動員力は高まっている。一方で各球場で開催されるプロ野球の試合数は年間70程度。ボールパークの次の目標は年間を通じたにぎわいづくりだ。横浜DeNAの岡村信悟社長は「試合がなくても、人が集まるようにしたい」と話す。

■ボールパーク
 試合観戦だけでなく、球場の内外でさまざまなイベントやグルメ、買い物を楽しめる野球場。米大リーグでは1990年代以降に完成した球場の多くでボールパークの要素を取り入れており、来場者の裾野拡大や球場周辺のにぎわい創出につなげている。

[日本経済新聞朝刊2018年7月7日付]