「だれでもトイレ」に健常者 必要な人にしわ寄せもオストメイト、LGBTなどに対象広がったが…

最新の多機能トイレにはオストメイト設備や介護用の折り畳みベッド、ベビーチェアなど盛りだくさんだ。最近は車いすの高齢者を家族が介助するなど、「異性同士で使う男女共用の機能も加わってきた」(同)。男女共用が多いので、性的少数者(LGBT)が使うこともある。

現場の混乱は、多様な利用者を一手に引き受けた結果でもある。追加導入された装置が邪魔になり「本来の車いす利用者が使いづらくなった」(齋藤理事長)との声も。

さらには緊急でない健常者まで加われば、利用がかち合う。電車の優先席と違い、個室のトイレは外から見えないだけに、疑心暗鬼の不満が鬱積しがちだ。

「優先」「専用」と呼ばない理由

混乱を減らす狙いもあり、国土交通省は17年3月末、建築物の設計標準を改訂。機能の1カ所集約ではなく、複数カ所で分担する機能分散を打ち出した。ただ設計標準はあくまで目安。実際に分散化が定着するには時間がかかる。

障害者用施設を示す車いすのマーク(左)や、人工肛門をつけた人向けを示すオストメイト(右上)、乳幼児のマークが並ぶ

名称の曖昧さも背景にある。自由に使えるような誤解を与えかねないからだ。

「だれでもトイレ」という名前が登場したのは00年。東京都が福祉のまちづくり条例の関連規定で使ったのが最初とされる。その後「みんなの」「多目的」など、似たような呼び方が広がった。

ただし、この「だれでも」、「通常のトイレ利用が難しい人は『だれでも』」(都福祉保健局)を意味している。緊急時などを除き健常者は原則対象外。では名称を変えればとの指摘があるが、簡単にはできない事情がある。

「『専用』や『優先』と呼ぶと、使っていい人いけない人を線引きしてしまう。分け隔てない社会を目指すユニバーサルやバリアフリーの考え方と相いれない」と都内自治体の担当者は打ち明ける。「特別扱いされるのはいや」という障害者の声もあり、名称変更に二の足を踏む。

多機能トイレの整備が進み、障害やハンディキャップのある人でも外出しやすい社会が実現しつつある。一方で、公共のトイレをどう使えばいいのか、社会の「トイレリテラシー」も問われている。

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マークの分かりにくさで誤解も

よく見かける車いすのマーク。車いす専用と思いがちだがそうではない。障害を持つ人が広く利用できる施設を示す。制定は50年前、世界共通だが「車いす専用との誤解がいまだにある」(日本障害者リハビリテーション協会)。

同じ意味でも、意匠が違うケースも。交通エコロジー・モビリティ財団(東京・千代田)の調査では「おむつ交換台」のデザインは20種類もあった。同財団は多目的シートなど8種類について統一案を検討中で、10月にも公表する。

オストメイトのマークは昨年7月、日本工業規格(JIS)に追加されたが、日本でしか通じない。何の意味か、トイレの前で外国人が首をひねることも考えられる。

(田辺省二)

[日本経済新聞夕刊2018年7月12日付]