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原因は遺伝子? 酒乱になる人とならない人、何が違う

日経Gooday

2018/7/23

「科学的な観点から言うと、酒乱とはアルコールによって脳内の大脳皮質がまひし、社会的な規範を逸脱する言動が出ている状態、またはそうした状態にしばしば陥る人を指します。簡単にいえばアルコールを飲むと性格がガラリと変わって、過激な発言をしたり、問題行動を起こす酒飲みのことです」(眞先さん)

「もちろん、酒乱といっても程度はさまざまです。中には憎めない酒乱もいます。関係者に容認された酒乱でむしろその人と飲みたいという人もいますし、逆に関係者から避けられる、つまりその人とは一緒に飲みたくない酒乱もいます。前者が『いい酒乱』、後者が『悪い酒乱』といえるでしょう」(眞先さん)

「大脳皮質のまひのレベルには違いがあると考えられます。極端な例として、行動が短絡的・暴力的になり、ときに犯罪に結びつくレベルになる『悪性酒乱』とも呼ぶべき状態になると、おそらく大脳皮質の大部分がまひに陥り、道徳的な規範などが守れなくなっている状態と考えられます」(眞先さん)

程度の差こそあれ、「もしや私も…?」と思った方も少なくないはず(私もである)。では一体、「酒乱」と呼ばれるタイプと、フツーの酔っ払いとでは何が具体的に違うのか? またどんな要因が人を酒乱にしてしまうのだろうか?

眞先さんは、「酒乱にもさまざまあり一概にはいえない」と前置きしつつも、主に「遺伝的な要因」と「環境的な要因」が考えられるという。中でも「酒乱と遺伝子が関係していることは間違いないでしょう」と話す。

■酒乱に深く関わっているアルコール脱水素酵素の個人差

「実は酒乱には遺伝子が深く関わっているのです。中でも注目すべきはアルコール脱水素酵素(ADH)と、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の組み合わせです。ADHやALDHの活性は、遺伝的な要因による個人差があります。酒乱の場合、特にADHのタイプが鍵になると考えられます」(眞先さん)

アルコール(エタノール)のほとんどは肝臓で代謝される。エタノールは「アルコール脱水素酵素(ADH)」により、アセトアルデヒドとなり、「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)」により無毒な酢酸になる

ADH、並びにALDHは過去の記事で何度も登場しているが、ここで改めて説明しよう。これらの酵素は、カラダの中でアルコール(エタノール)が分解されるプロセスで欠かせないものである。私たちのカラダの中ではアルコールが入ると、まずADHによって、毒性を持つアセトアルデヒドに分解される。次にALDHの働きによって、アセトアルデヒドは無害な酢酸に分解され、最終的には水と炭酸ガスなどに分解される。このADHやALDHの活性は遺伝的要因が大きく影響する。

以前の記事でも紹介したように、一般に、酒の強さについては、ALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)の活性のほうが大きく関与するといわれている。お酒を飲んで顔が赤くなる、ならないの差もALDHが大きく影響する。

しかし、酒乱については、ADH(アルコール脱水素酵素)が深く関与しているというのだ。ADHには種類がいくつか存在するが、大きく影響するのがADH1B(以前はADH2と呼ばれていたもの)だという。両親からADH1Bのどの遺伝子をもらい受けるかによって、アルコールの分解能力が変わってくる。

■あの遺伝子を2つ持っているタイプが危ない!?

「日本人の場合、ADH1Bの遺伝子は、ADH1B*1とADH1B*2の2つがあり、前者を持つ人はアルコールの分解速度が速く、後者を持つ人はアルコールの分解速度が遅くなります。遺伝子は両親からそれぞれ1つずつもらい受ける、つまり*1または*2のいずれかを両親からもらい受けますから、*1を2つ持つ人、*1と*2を1つずつ持つ人、そして、*2を2つ持つ人の3タイプがあります」(眞先さん)

「このうちADH1B*2を2つ、つまりアルコールの分解速度が遅い遺伝子を2つ持っているタイプが、いわゆる酒乱に近い飲み方をすることが多いのです。このタイプの人は、アルコールを飲んだときの盛り上がりが激しく、時に泥酔して記憶をなくしてしまう傾向がよく見られます」(眞先さん)

眞先さんがこうした独自の分類を導き出したのは、アルコールに関わる医療で日本をリードしている久里浜医療センター(当時は国立療養所久里浜病院)に勤務していたころ、同僚のドクター10数人の酒の飲み方を比較してのことだという。専門病院だけあって、ドクターのADHやALDHなどの遺伝子型をすべて把握できている。遺伝子型を把握した上で、ドクターの飲み方を観察して導き出したわけだ。

「ADH1B*1を2つ持っている人は盛り上がりがほとんどないけれど、酒量はかなりいける酒豪タイプ。*1と*2を1つずつ持っている人は中間の飲み方をします。こうしたことから私は、ADH1B*1を『酒豪遺伝子』、ADH1B*2を『酒乱遺伝子』と呼んでいます。ただし、これらは、仲間内の医師という特殊な少数例から導き出した、あくまで仮説であることにご注意ください」(眞先さん)

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