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ピアニスト藤田真央 10代最後のショパン

2018/7/7

藤田さんのモーツァルト「ピアノソナタ第18番」は音がくまなく澄み切っていて、リズムもインテンポではっきり刻まれて爽快だ。響きが明瞭なためか、作曲場所のウィーンよりも、アルプス山脈の南斜面の陽光豊かな土地を思わせる。地中海に近い南フランスの明るさを漂わせるハスキルのモーツァルトにも通じる。ハスキルのような素晴らしいピアノ演奏では、いくつものまばゆい真珠が転がるようにモーツァルトの曲が鳴るが、藤田さんの演奏でも速い第1楽章「アレグロ」が特にそうなっている。

ショパンとモーツァルトを対照させた3作目CD

第2楽章「アダージョ」でも、遅いテンポの中で一音一音がそれぞれのリズムの役割を担って明快に鳴る。もの悲しい短調の部分でも音色が澄み切っているため、かえって憂いが謎めいてくる印象を与える。第3楽章「アレグレット」は中間のテンポで古典派の形式美を克明に伝える。全3楽章を通してまさにモーツァルトの音楽の本質を浮き彫りにしている。

ピアニスト藤田真央さんの10代最後にして通算3作目のCD「passage(パッセージ)ショパン:ピアノソナタ第3番 モーツァルト:ピアノソナタ第18番」(発売元ナクソス・ジャパン)

「モーツァルトの作品は音数が少ないので、わりと演奏家の個性が出やすい」と指摘する。「ハイドンが確立したソナタ形式にのっとりながらも遊びがある。演奏家としても味を出せる。大好きな作曲家だ」。今回録音した「ピアノソナタ第18番」については「モーツァルトの最後のソナタ。今までモーツァルトが書いてきた様々なものを凝縮させている」と話す。そしてとりわけ特徴として「半音階を多用している」という点を挙げる。

この曲と組み合わせて前期ロマン派ショパンの「ピアノソナタ第3番」を収録しているのは意外感があるかもしれない。しかし「ショパンのソナタ第3番も半音階を多用している」ところが両曲を結び付けるという。「この曲も第1楽章が半音階だらけ。半音階を多用してモーツァルトがやったように、ショパンも調を様々に動かしている。モーツァルトとショパンは似通っている部分がある」と分析する。その上で「この2つの作品を照らし合わせながら、リストの『ハンガリー狂詩曲第2番』やシューマン作曲・リスト編曲の『献呈』など、バランスのいい曲を選んだ」。こうして完成した今回のCDを藤田さんは10代の集大成と位置付ける。

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