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小気味よさ、気品…古典落語の涼しさ味わう

立川談笑

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NIKKEI STYLE

東京は7月の声も聞かずに早々と梅雨明け宣言が出ました。あっけない。あまりにあっけない。そしてやってきましたよ、うだるような暑さが。天空のどこかにあるスイッチが壊れてるんじゃないかなあ。「やっと梅雨明け」「さわやかな初夏」をすっとばして、いっきなり「真夏」だもの。今回はそんな暑さを上手にしのぐ、「納涼」のお話です。

まずは「納涼」という言葉を考えてみます。涼しい北海道や軽井沢で過ごすのは「避暑」であって、「納涼」ではなさそう。また、「暑いから、ちょっとエアコンの温度を下げようか」ってのも、「納涼」って感じじゃありません。私の感覚でいうと、なんとなく、屋外のイメージ。基本的に暑くて、ちょっとだけ涼しい。あるいは涼しい気がする。つい暑さを忘れる。こんなところでしょうか。

華やかな江戸の風情

さて、納涼の定番といったら、花火ですよね。納涼花火大会と称して毎年あちこちで盛大に催されています。日暮れ時の河原に明るい屋台がずらっと出ている。人の波をかきわけながら浴衣姿でうちわ片手にそぞろ歩きなんて、結構な風情です。「ヒューッ」。糸を引くように夜空に小さな光が吸い込まれると、途端に視界いっぱいに鮮やかな光の花が開いて「バッ、ドドーン!」。胸に響くほどの爆発音。そして一瞬遅れて、観衆の拍手とどよめきが広がる。

「スター、マイーン!」

なんて場内アナウンスもまたしみじみと味わい深いものです。

その昔、江戸の納涼といえばなんといっても「両国の夕涼み」でした。浮世絵にもずいぶん残っています。どの絵も、ぎっしりと群衆が詰めかけた橋の上と、大小の舟がひしめく川面が強調されています。大津絵という歌に残っていますので、引用しますね。

「両国の夕涼み 軒を並べし茶屋の数 団扇店(うちわみせ)楊弓場(ようきゅうば) そのほか数多(あまた)の諸商人(しょあきうど) 川の中ではテケテン馬鹿囃子(ばかばやし) ウロウロ舟(ぶね)に影芝居(かげしばい) 屋形(やかた)屋根舟(やねぶね)ある中で『そーれ、上がった上がったあ! たーまやー! かーぎやー!』」

当時の川開きの賑やかな風情が伝わるでしょうか。これが大津絵両国という長い歌の、ほんの冒頭部分です。それにしても、浮世絵に描かれている「花火」がちょっと我々の想像と違うんですよ。言葉を選ばないといけないけど、ヘンテコなのが多い。妙にニュルニュルしてて、みみずみたいなのがあったりして。なにか理由があるのかしら。変なところが気になって納涼どころの気分じゃないなあ。

両国の夕涼みの続き。これが古典落語だと「たがや」になります。

花火当日の夜のこと。何万人もの見物人でごった返す両国橋の上で、ひとりの桶職人(たが屋さん)が複数の侍を相手に刀を振り回しての大立ち回りを演じます。こちらはサゲ部分をご紹介。

「一足(いっそく)跳び下がって殿様が刀の柄(つか)に手をかけるより、たが屋がおどり込んだ方が早かった。『えいやあっ!』横に払った一文字。殿様の首が中天高くスポーン! 見ていた見物人が『ほうら、上がった上がった。たーがやー!』」

 さてさて、もう少し古典落語の世界での納涼を探してみましょう。今度は「舟徳」。

「四万六千日(しまんろくせんにち)、お暑い盛りでございます」と先代文楽師匠がくっきりとした口調で切り出すと、いきなり目の前にカッと照り付ける真夏の陽光が広がるようです。

登場するのは浅草寺にお参りに向かう二人の紳士。川風に吹かれるのが心地よいからと舟宿に立ち寄ると、素人同然の船頭(徳さん)が出てきて舟の上でさんざん酷い目にあう話です。

四万六千日とは、その日にお参りすると四万六千日お参りしただけの功徳があるという、いわばお参りのビッグボーナス日のことです。今では浅草寺の四万六千日は7月10日にあたるそうで、それに合わせて催されるほおずき市は東京の夏の風物詩です。

この「舟徳」では、冷や汗をかくという意味ではいくらか納涼効果はあるかもしれませんが、まったく心地よくはありません。それでも川風に吹かれる、水辺で憩うとは、納涼の王道と言えます。京都の川床(かわどこ)なんてあこがれますよ。川辺に張り出した桟敷で、懐石料理とお酒を楽しんだり、鱧(はも)なんて頂いちゃったりするのかなあ。気持ちよさそうだなあ。んー? もんもんとしながら調べていたら、鴨川は床(ゆか)あるいは納涼床(のうりょうゆか)で貴船は川床と呼ぶんですって。こっちはよそ者なんだから知らないよ~。ただ、ひたすらあこがれてるんだよぉ。

ご主人のセリフに感嘆

最後にもうひとつ。納涼という意味では古典落語「青菜」が秀逸です。ストーリーとしては、植木職人が仕事先のご主人に思いがけずごちそうしてもらう。ご主人と奥様との上品なやりとりに感心した職人は、帰宅しておかみさんを相手にやりとりをまねしようとする。そんな話です。

涼しげなのは前半のお屋敷でのシーン。ご主人のセリフにこんなのがあります。

「植木屋さん。おまえさんが水をまくと、庭一面にサーッと雨が降ったようだ。青い物からしずくが垂れる。そこを通ってくる風などは、もはやなんとも言えませんな」

うっふっふ。どうですか。涼しげでしょう。「打ち水」もまぎれのない納涼要素ですよ。さらに、縁側でご主人にもてなされるときの様子が涼やかなんです。

まずはお酒。「京都の友人が送ってくれた柳陰(やなぎかげ)じゃによっておあがり」。これは江戸でいうところの「直し」「本直し」。みりんと焼酎を1対1で合わせたもので、当時は井戸水でキンッキンに冷やして楽しんだのだそうです。私も自分でやってみました。みりんの甘みに焼酎のキレがすっきりとして、暑い時には最高です。

また供されるのが鯉(こい)のあらい。鯉の刺し身を冷水でしめる、これだけでも涼しそうなのに、なんと下に氷が敷いてあるんです。当時の、夏場の氷ですから高価ですよ。庶民の口にはまず入らない代物です。植木屋さん、喜ぶあまりに氷を口に含んで頭をキンキンさせたりと大はしゃぎします。

暑さがあるからこそ涼の心地よさが感じられるのかもしれません。とはいえ、熱中症になったら元も子もありませんから。水分と塩分の補給に気を付けて、暑い夏を乗り切りましょうね。ふう、今回はここまで。さーてと。エアコンをもうちょっと強くしようかな。

立川談笑
 1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。

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