勝ったつもりが「ものにした」? winにひそむ大誤解
デイビッド・セイン「間違えやすい英語」(26)win
言葉の使い方を間違えて相手に誤解されてしまった。そんな体験はどなたにもあると思います。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が間違えやすい英語の使い方を解説します。今回は、win の使い方。「~に勝つ」のつもりで人を直接目的語にとると、ちょっと困ったニュアンスになるようです。
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勉強するときはいつも完全を目指す。しかし会話をするときは通じることを目指す。これが英会話には必要なポイントです。相手を前にして英語を話すときは、完璧な英語でなくても構いません。間違いがあってもいいのです。フレンドリーに笑顔で話せば、不完全さは補われます。間違いを恐れず英語を話しましょう。そして勉強するときは完全を目指しましょう。
正しい英語の使い方を知らなければ相手に大きな誤解を与えることは、ヒロシには経験から分かっているはずですが、それでも間違いを重ねる日々に、ナンシーは驚いたり、時にはムッとしながら、そのギャップを埋めるべくヒロシに正しい英語の使い方を教え、正しいコミュニケーションを図ろうとしています。さて、今日のヒロシは何と言ったのでしょうか。
それはこんな会話でした。
Hiroshi: I won Mr. Hansen.
Nancy: You won him?! He's yours?
Hiroshi: Mine? No!
ヒロシは期せずしてこのように言ったことになります。
ひろし:ハンセン氏をものにしましたよ。
ナンシー:あなたが彼を勝ち取った?彼はあなたの物なの?
ひろし:僕の物?…いいえ!
This will be win-win relationship for both our companies. 「これは御社にとっても我が社にとっても、双方の利益になるでしょう」のように win-win は双方の利益になること。これはすでに日本語になっている英語のひとつです。I won a million dollars.「100万ドル勝った」 I won a new car.「新車を勝ち取った」のように試合やレースに勝つ、賞などを勝ち取る場合はwin の後にそのまま目的語を取りますが、「win + 人間」だと、例えば女性を「口説き落とす、モノにする」のような意味になってしまいます。I won Mr. Hansen. と聞いたナンシー、さぞびっくりしたことでしょう。
ではどう言えばよかったのでしょう?