運転中、目の前に竜巻が! どうするのが正解?
車の運転中に突然竜巻が目の前に現れたら、どうやって逃げれば助かるのだろう? この動画を見ると、そんなことをまず考えてしまう。
映像が撮られたのは、2018年5月下旬。ドイツ西部で発生した竜巻が、車の方へと近づいてくる。動画には、巻き上げられた土や竜巻の渦だけでなく、停止した2台の車が竜巻をやり過ごす様子が映っている。幸い、竜巻はそれほど大きなものではなかったようだ。
ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもある気象学者アントン・セイモン氏は映像を見て、竜巻の大きさを考えると運転していた人の判断は適切だった、と述べた。「一見、強烈な竜巻に見えますが、車が巻きこまれた時点では、威力は弱くなっていたように思います。このときの風の強さは、ハリケーンと同じかそれよりも弱かったでしょう」
もっと強い竜巻に遭遇した場合は、交差点があるなら竜巻が進む方向から遠ざかることだ。では、逃げ道が見つからない場合はどうしたらよいのか?
「車の中で竜巻をやり過ごそうとせずに、車を降りましょう。排水溝など地面よりも低い場所を見つけて、顔を下にして横たわってください」とセイモン氏は言う。竜巻は弱いものでも、車を横転させる力がある。強い竜巻なら、車が空中に舞い上がり、地面に叩きつけられることも珍しくない。つまり、車に搭乗したままのほうが、大けがをしたり命にかかわったりするリスクに直面する。
欧州における竜巻の被害は、1950年から2015年までの間で、死者316名、負傷者4462名にのぼる。大きな被害があったにもかかわらず、欧州では竜巻に関する情報伝達体制が整っていない。2017年のアメリカ気象学会(AMA)の論文によれば、予報ツールがない、人々の関心が低い、竜巻を追跡するデータベースがほとんどない、などが理由だという。
現状では、竜巻研究は、米国や一部の気象学者が主導している。ヨーロッパでは、竜巻に関する情報は少なく、竜巻警報を出す気象機関はほとんどない。
前述の論文の著者たちは、この状況を打開するためのアイデアとして、ヨーロッパの気象機関同士が密接に連携し、竜巻の統合データベース構築、予報や警報システムの改善、事前準備や事後対応プログラムの整備など、を行うことを提案している。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2018年5月31日付記事を再構成]
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