津田大介 BOSEの肩のせスピーカーは「日本向き」
ジャーナリストの津田大介氏が気になるモノやサービスに迫る連載「MONOサーチ」。今回はBOSE(ボーズ)の肩のせスピーカー「SoundWear Companion speaker」(SoundWear)を試用した。前回取り上げた「Xperia Ear Duo」(記事「津田大介 耳をふさがないイヤホン、つけっ放しで真価」参照)と同様に、「耳をふさがずに音楽が楽しめる」ハードウエアだが、楽しみ方は異なるという。
横になっても着けていられる
SoundWearは、U字型に湾曲したネックバンド型のスピーカーだ。中には形状固定ワイヤが入っており手で曲げられるので、首や肩の形に合わせてぴったりフィットさせることができる。
重量は266g。肩にかけていてもほとんど重さは感じなかった。これなら装着したまま、仕事や家事もできるだろう。ベッドで横になった状態でも着けていられたので、横になってリラックスして音楽を聴くという楽しみ方もできる。ただし、女性や肩こりに悩んでいる人には、重く感じるかもしれない。不安な人はボーズストアなどで実際に試してみるといいだろう。
ジャズ、ソフトロックは気持ちよく
SoundWearを装着して様々なジャンルの音楽を流してみたのだが、BOSEのスピーカーの中でもクセがあるように感じた。得意なジャンルと苦手なジャンルは分かれそうだ。ジャズやソフトロック、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)など、あまり激しくないジャンルは気持ちよく聴くことができた。
また、一音一音の分離がとてもよいので、ノイズやひずみの少ないハイファイな音楽を楽しみたい人にも向いているだろう。一方、左から右に流れる音や、右だけで鳴っている音が、どうしても中央寄りで聞こえてしまう。左右のステレオ感を楽しむ音楽には向いていなさそうだ。
Xperia Ear DuoとSoundWearの違い
Xperia Ear DuoとSoundWearは「耳をふさがずに音楽が楽しめる」という点では同じだが、イヤホンとスピーカーという違いがあるので、自然と利用シーンは分かれる。SoundWearはスピーカーなので、音楽を流していると周囲にも聞こえる。基本的に利用する場所は室内に限定されるだろう。Xperia Ear Duoは音漏れをしないため、利用できる場所は多い。外出時に音楽を聴くだけでなく、オフィスで仕事をしながら使っていても周囲の迷惑にならない。
SoundWearを出張に持っていき、ホテルで音楽を聴いたりスカイプ通話などにも使ったりしてみたいが、大きいのでカバンに入れて持ち運ぶのが大変だ。コンパクトに折りたためるようになると、利用シーンがより広がりそうだ。
音質はスピーカーであるSoundWearのほうがよいと感じた。普段外で音楽を聴かない人は、こちらがいいだろう。肩にかけるだけで簡単に使えるのも便利だ。
日本の住宅に向いているコンセプト
SoundWearは、耳元にいつでもスピーカーがある状態なので、従来の据え置き型スピーカーとは異なり、部屋のどこにいても同じ高音質で音楽を楽しめる。実際に使ってみて、このコンセプトは日本のような住宅環境に向いていると感じた。
日本は住宅が密集しているし、壁が薄いアパートも多かったりする。隣で流れている音楽やテレビの音が聞こえてくることもある。スピーカーで音楽を流したいけれど、隣への音漏れが心配で、ヘッドホンを使っている、または音楽から遠ざかってしまったという人もいるのではないか。
耳元で音楽を再生するSoundWearなら音漏れはかなり軽減できるから、隣人へ迷惑にならないか気になる人でも音楽を楽しめるだろう。Bluetoothに対応したテレビなら、音声をSoundWearから流すこともできる。そういう意味で日本向けのハードウエアといえるだろう。
ライフスタイルに合わせ聴き方を選択
前回も話した通り、スマートフォンの普及によって、音楽が場所を選ばず楽しめるようになった。
その結果、「音楽を流した状態で、周囲の音や声に反応したい」というニーズも生まれてきた。
BOSEも音楽を聴くシーンの多様性は認識しているようで、SoundWearについても「スピーカーの音質とイヤホンの携帯性を兼ね備えた製品を開発したかった」と話している。
音楽を流した状態でも周囲の音や声にも反応できる仕組みを求められるようになり、Xperia Ear DuoやSoundWearなどの製品が相次いで登場しているのだろう。家事やオフィスでの仕事など、ライフスタイルによって選択できる製品が増えてきたのはうれしいことだ。
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。「ポリタス」編集長。1973年東京都生まれ。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。主な著書に「ウェブで政治を動かす!」(朝日新書)、「動員の革命」(中公新書ラクレ)、「情報の呼吸法」(朝日出版社)、「Twitter社会論」(洋泉社新書)、「未来型サバイバル音楽論」(中公新書ラクレ)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。
(編集協力 藤原龍矢=アバンギャルド、写真 渡辺慎一郎=スタジオキャスパー)
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