夜道の電話は逆効果 痴漢や暴漢から守る4つの護身術
「歩きスマホ」をしているときだけに限りませんが、犯罪に巻き込まれる恐れは誰にでもあります。今回は「もしものとき」に備えて、セキュリティーサービス会社の綜合警備保障(以下、ALSOK)に護身術を聞きました。被害に遭いそうになったときは、一秒でも早く危険から逃れることが大切。自分の身を守るため、4つの護身術を覚えておきましょう。
密室になるエレベーター もし不審者が乗ってきたら?
そもそも護身術とは、相手を倒すのではなく、自分の身を危険から回避するための手段。ALSOKの渡辺文子さんは、「普段からの心構えが一番の護身術。危険な目に遭う機会をつくらないことこそ護身術の極意」と話します。
しかしデータを見ると、犯罪被害状況は深刻です。犯罪情勢を調べた警察庁の統計資料※によると、「強制わいせつ」「公然わいせつ」「強姦」といった項目で、私たちが会社から帰宅する、または飲み会などで帰りが遅くなる時間帯の18時~深夜2時までの間に被害に遭う割合が多くなっています。
※出典元:警察庁統計平成28年の犯罪 刑法犯認知状況(発生時間帯)
防犯対策として「電話をしながら夜道を歩く」という方法を実践している人もいるかもしれませんが、実は逆効果。渡辺さんは、注意力が散漫になってしまい、犯行者の接近に気付かない可能性があると語ります。
「スマホでの通話は、イヤホンをして音楽を聴いているのと同じ状況だと考えましょう。たとえ電話の向こうの相手が危険を察知したとしても、すぐに助けに来られるわけではないと分かった上で、犯行者は犯行に及びます。帰宅時は電話をしたり音楽を聴いたりせず、周囲を警戒しながら歩きましょう」(渡辺さん)
マンションの場合、犯行者がオートロック式の出入り口を通り抜け、エレベーターに同乗した女性に強制わいせつをする可能性があります。エレベーターに乗るときは、壁を背にして操作ボタンの前に立ち、誰かが乗ってきたらその階で降りるようにしましょう。その場合、渡辺さんが推奨する次のような方法なら相手に悪印象を与えず危険から逃れることができます。
「エレベーターに同乗した人に不信感を抱いてしまった場合にはスマホが役立ちます。電話がかかってきたふりをして、すぐにエレベーターを降りましょう。これなら相手が不審者ではなかったとしても悪い印象を与えることはなく、マナーを配慮した行動だと思われます」(渡辺さん)
また、家に入るときは外に背中を向ける格好になるため無防備になりがちで、この隙を狙って押し入られるというケースも少なくありません。
「鍵を開ける前に周囲を警戒し、素早く自宅に入って、すぐに鍵を閉めましょう」(渡辺さん)
さらに一人暮らしの場合、自宅の鍵を開ける際に「ただいま」と言うと、同居人がいるかのようにカモフラージュできます。コンビニなどで食べ物を買うときは、二人分以上の品を買うか、箸を複数もらうといった心掛けも大切です。
次はいよいよ実践編。ALSOKが過去3年間で150回以上開催している「ALSOK 女性向け防犯セミナー」で教えている護身術を紹介します。まずは手をつかまれたときの対処法から。
【実践編1】手首をつかまれたときに使える護身術(1)
【逆の手でつかんできた場合】
まずは、相手が自分と逆の手で(例:自分の左手を相手が右手で)つかんできた場合です。
(1)手をパーに開き、腕に力が入りやすい状態をつくります。
(2)前の足に力を入れ、相手の手のひらのほうから一気に引きます。
(3)引いた手を自分の顔まで寄せ、手が離れた隙に逃げましょう。
【実践編2】手首をつかまれたときに使える護身術(2)
【同じ手でつかんできた場合】
続いては相手が同じ手で(例:自分の左手を、相手も左手で)つかんできた場合の対処法です。
(1)つかまれた左手の甲を相手の腕の下を通すようにして手を上げ、相手の手首をひねります。
(2)自分の小指側から、手刀で相手の手を振り払い、逃げます。
【実践編3】背後から肩をつかまれたときに使える護身術
続いて紹介するのは、背後から肩をつかまれたときの対処法です。
(1)つかまれた側の腕を、前から後ろに向けて大きく回します。
(2)肘を伸ばしたまま、相手の腕と交差させます。
(3)そのままの勢いで相手の腕を振りほどき、逃げます。
【実践編4】背後から抱きつかれたときに使える護身術
背後から抱きつかれると、怖くなって身を守ろうと前かがみになってしまいがちです。しかしそうすると、上から相手がのしかかって来たときに力で負けてしまいます。
(1)そこで、背筋を伸ばしたまま膝を曲げ、地面を蹴り出す力をためます。
(2)相手の重心が崩れた隙に、足を大きく一歩前に踏み出して立ち上がり、同時に上に手を広げて相手を振り払い、逃げます。
◇ ◇ ◇
今回、ALSOKの渡辺さんに教わった護身術は誰でも実践できる簡単なものですが、万が一のときはパニック状態に陥る可能性があります。体が反射的に動くように、時々復習をしておくとよいでしょう。
自分の身を守るための手段として護身術を身に付けることは有効ですが、危険な目に遭う機会をつくらないことこそが重要なのです。改めて、普段の心構えが一番の護身術と心得ておきたいものですね。
(ライター 華井由利奈、写真 小野さやか、指導 渡辺文子=ALSOK)
[nikkei WOMAN Online 2018年5月30日付記事を再構成]
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