ZenFone 5 納得のコスパ、画面も広く使いやすい
戸田覚のデジモノ深掘りレポート
ユーザー視点の辛口評価で好評の戸田覚氏が、エイスーステック・コンピューター(ASUS)の「ZenFone 5」をレビューする。テスト用のスマートフォン(スマホ)として自分で購入した製品だ。
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僕はスマホを何台か使っている。アプリの記事をよく書くこともあって、仕事やプライベートで使うスマホのほかにテスト用のスマホも必要だからだ。テスト用といっても普段からよく持ち歩いて利用している。メインのスマホとの違いは、いつでも初期化できる心構えをしていることくらいだ。
新しいスマホを物色し、ころ合いの製品として選んだのがエイスーステック・コンピューター(ASUS)の「ZenFone 5」だ。流行のワイド画面であるのはもちろん、性能もそれなりにいいので2年間は使えそうだ。実売価格は5万3000円ほどだ。
質感は上々だがカラーバリエーションに不満
この価格帯のスマホとしては本体の質感も上々だ。背面がガラスで、エイスースが得意とする同心円に輝く意匠。側面はアルミで、表面がサンドブラスト仕上げになっている。ちょっと目の粗いつや消しは、金属の質感も相まって高級モデルに匹敵する。ディスプレーは縁がなめらかに丸まった2.5Dガラスだが、2万~3万円モデルでも当たり前に搭載するようになっているので、特徴といえるほどのものではない。
本体カラーは「スペースシルバー」と「シャイニーブラック」の2色が用意されているのだが、迷っているうちにシャイニーブラックが売り切れたので、スペースシルバーを選んだ。どっちでもいいという気持ちが半分と、所有している他のスマホは黒が多いので、シルバーのほうがかぶり感がなくてよいと思っていたからだ。
ただ、この2色展開はちょっと芸がないとは思う。いずれも落ち着いたカラー展開だからだ。ブルーやゴールドなど、もう少し特徴のある色を用意しても良かったのではないか。特に、このデザインとカラーだと、かなりおじさん向きに感じる。若い人や女性にも受け入れやすいデザインにすればさらに売れたと思うのだ。
このクラスのスマホはストレージに注意
エントリーからミドルモデルまでのスマホを買う場合、ストレージの容量には気をつけたほうがいい。一般には32GBもしくは64GBが主流だ。さらに上のクラスになると128GBも選択できる。ZenFone 5は64GBだ。
32GBのモデルでも、microSDカードを増設すればよいという考え方もある。確かに、写真や音楽を保存するならそれでもいいだろう。だが、アプリをたくさんインストールすると途端に容量が不足して困ることがある。僕の場合はアプリの検証のために使用するので死活問題だ。容量の大きなゲームをインストールできなくて困っている人も少なくない。基本的には、アプリは内蔵のストレージに保存されるので、容量が少ないと使えないのだ。いま使っているスマホが32GBで2~3割空いている状態なら、64GBモデルを強くお薦めする。これから、2~3年使うことを考えると絶対に足りなくなるからだ。
ZenFone 5はベンチマークの値もそこそこで、10万円クラスの上位機に比べると、5~6割といったところだ。このレベルなら日常的に使うには十分。2~3年で陳腐化することはまず考えにくい。もちろん、2年後にヘビーなゲームをプレーするのには物足りないだろうが……。
ディスプレーは100点
僕はメインのスマホとしてiPhone Xを使っているが、もう手に入れて半年ほどたつのに、いまだに画面の小ささが気になる。やはり、純粋に画面の面積が大きくないと僕には使いづらいのだ。その理由は、そもそも加齢で遠視が入ってきたことに加え、ローマ字キーボードでタイピングするときにキーが小さくなるからだ。
5.8インチのiPhone Xに比べて、6.2インチのZenFone 5は画面サイズが大きく見やすい。最近は縦長のスマホが増えているのでインチ数で比較してもあまり意味はないが、iPhone Xに比べると明らかに幅が広い。キーボードのサイズは実質少ししか違わないが、それでも体感ではかなりの余裕がある。
2万~3万円の格安モデルにはコンパクトな製品も多いが、同世代の方にはZenFone 5クラスがいいだろう。ワイド画面なら6インチ以上のモデルが使いやすいと思うのだ。
残念ながらZenFone 5は有機ELではなく液晶を採用している。単体で見ると驚くほど美しいが、iPhone Xと並べると明るさの差にあぜんとする。だが、価格を考えると十分合格だと思う。確かに有機ELは美しいのだが搭載モデルはまだ高すぎると思う。
なお、ノッチの付いたディスプレーについて否定的な意見を多く見かけるが、僕としては全く気にならない。大画面にノッチが付いたと思うのではなく、インカメラのレンズの両脇だけディスプレーが伸びたと考えると納得できる。画面は1%でも広いほうが使いやすい。ノッチの左右で電池残量や時間などが表示されるだけでもいい。
USB PD対応のバッテリーで急速充電可能
ZenFone 5は「ASUS BoostMasterテクノロジー」によって、バッテリーの高速充電が可能で、カタログ値では32分で50%まで充電できるとしている。ただし、対応する充電器は付属せず、別途18Wの充電器が必要とのこと。これは大変残念なポイントで、やはり急速充電に対応した純正の充電器が付属するべきだと思う。
手元にあったUSB PD(※)対応の18Wのモバイルバッテリーを使ったところ、確かに急速充電ができた。USB PD対応の別のACアダプターでも同様で、8.8V、1.25A程度での充電ができている。純正との比較ができないので、これが最高の値なのかは不明だが、急速充電できることは間違いなく、汎用性の高いUSB PD対応製品が使えるのはとてもうれしい。
価格を考えれば文句なし
主にテスト用ということで、妥協して買ったZenFone 5だが、使ってみると大満足だ。今回は、IIJmioの割引で一括払いの4万8800円(税別)で入手、さらにAmazonギフト券のプレゼントが1万円分ついてきた。Amazonのヘビーユーザーの僕としては、税込み4万2000円ちょっとで買えたことになる。これなら納得だ。
上位機は、10万円程度なので、価格差は6万円近い。1番じゃなくて良いから優れたスマホを使いたい人には、間違いなくお薦め。実は同価格帯のライバルが少ないのもZenFone 5を推す理由の一つだ。
※USB PD(Power Delievry) USBケーブルを使って最大100Wまでの受給電を可能にする規格。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。近著に、『ここで差がつく! 仕事がデキる人の最速パソコン仕事術』(インプレス)がある。
[日経トレンディネット 2018年6月25日付の記事を再構成]
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