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カリスマの直言

米国第一主義は終わらない 円高リスク警戒(藤田勉) 一橋大学大学院特任教授

2018/7/9

米トランプ政権の外交・通商政策はこれまでになく強硬だ(写真はイベントでスピーチするトランプ氏、6月29日、ワシントン)=AP
「トランプ政権が掲げる米国第一主義は歴史の必然である」

米国のトランプ大統領の外交・通商政策が世界の市場を揺り動かしている。中国などに対する鉄鋼やアルミニウムの輸入関税の引き上げにしても、在イスラエル米大使館のエルサレムへの移転にしてもこれまでにない強硬的な内容だ。これらの措置はいずれもトランプ政権が掲げる「米国第一主義」の考え方に基づく。筆者は米国第一主義は歴史の必然であり、長期間続く可能性があるとみている。特に円高リスクには警戒が必要だ。

■トランプ政権のコア層の支持は強固

国際社会からの批判は強いが、米国国内ではトランプ政権のコアの支持層である共和党保守層と白人労働者層からの支持が強固である。一連の強硬策を受けて、トランプ政権の支持率は2017年12月の35%を底に足元は41%(不支持率は55%)に上昇した。共和党支持者のトランプ支持率は87%と圧倒的に高い(米ギャラップ調査、2018年6月18~24日)。

米国の政治制度は日本と大きく異なるため、世論調査と選挙の結果は大きく乖離(かいり)する傾向にある。16年大統領選挙では、ヒラリー・クリントン氏の得票数は6585万票とトランプ氏の6298万票を上回った。しかし、選挙人獲得数はトランプ氏が304人とクリントン氏の227人を大きく上回った。さらに、トランプ氏が所属する共和党が上院、下院で多数を獲得した。

つまり、米国独特の選挙制度によるものとはいえ、有権者は結果としてトランプ政権と共和党の政策を明確に支持し、米国第一主義を選択したのである。筆者は以下の2つの理由から、米国第一主義は相当長期間にわたって続く可能性があると考える。

第1の理由は、孤立主義は米国の外交戦略の伝統だからである。歴史は建国に遡る。1620年に英国国教会の弾圧を受けた清教徒はメイフラワー号で新天地「アメリカ」にたどり着いた。その後、欧州の階級社会を嫌い、多くの人々が自由とアメリカンドリームを求めて移住した。

1773年の「ボストン茶会事件」は英国の植民地課税に反発して起きた。米国は1776年の独立宣言以降、欧州から距離を取る外交政策をとった。1823年に第5代大統領ジェームズ・モンローは米国が欧州に干渉しない代わりに、米大陸は米国の影響下に置き、欧州は介入を避けるよう求めた。これをモンロー主義と呼ぶ。基本的に第2次大戦の前まで続いた。

■米国の長い伝統は孤高の単独主義

戦前、米国の外交政策は対外不干渉主義を基本とした。第1次大戦後も米国は国際連盟に加盟せず、1939年にヒトラー率いるドイツがポーランドに攻め入っても「これは欧州の戦争にすぎない」と不介入主義を貫いた。

長く孤立主義をとることができた理由として、地理的な条件がある。米国が欧州やアジアから離れており、国土が他国に攻撃されたことはなかった。このため、自国防衛のために軍事同盟を結ぶ必要がなかった。さらに、広大な国土、人口、食糧生産力、資源、そして経済力を持っていたので、他地域に干渉する必要性が小さかった。

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