自動開閉・強風でも安心 海外製折り畳み傘の実力
納富廉邦のステーショナリー進化形
雨の日に限らず、カバンの中に入れている人も多い折り畳み傘。自動開閉や風に強い構造など、新しい機能を取り入れた最新モデルも増えている。
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傘の歴史は古い。アッシリアやペルシャの石版などに描かれているというのだから、紀元前からあることになる。元は日傘で、雨傘はかなり後に登場したらしい。これは要するに傘に張れるはっ水素材が見つかるのに時間がかかったということだろう。雨にぬれるより、直射日光にさらされるほうが命の危険が大きかったということもあるかもしれない。
石版に描かれた絵を見ると、傘の形は現在の製品と大きく変わらなく見える。雨傘も、雨を防ぐソリューションとして大きな進化がないまま現在まできてしまったといえるだろう。映画「ブレードランナー」が公開された当時(1982年)、そこで描かれた未来でも傘は傘のままで軽く絶望した記憶があるのだが、35年後に作られた続編「ブレードランナー2049」(2017年公開)でも、やっぱり傘は傘だった。フィクションの中でさえ、傘は傘のままであり続けることに、感心さえしてしまう。
そんな傘の中でも「ワンタッチ傘」や「折り畳み傘」は、数少ない進化の一つといっていいだろう。特に「折り畳み傘」という、傘に携帯性を付加した発明は画期的だった。突然のゲリラ豪雨にも悩ませられる日本では、あくまで長傘の予備だったはずの折り畳み傘のほうが主力といっていい状態になっている。
折り畳み傘を最初に商品化したのは、ドイツのKnirps(クニルプス)だといわれている。特許の取得は1934年。まだ発明されて100年たっていない。紀元前から続く傘の歴史からすると新製品のようなものだ。
折り畳み傘に関しては、海外製のモデルが面白い。日本製にはない特徴を持つものも多いからだ。今回はそのなかから3社の折り畳み傘を紹介する。
折り畳み傘の元祖Knirps
折り畳み傘を最初に発売したKnirpsの製品は魅力的だ。スチールとグラスファイバーを組み合わせた8本の骨は、風にも強い。個人的に使用しているKnirpsの傘は風でひっくり返されたことはない。
フラッグシップモデル「T.320」をはじめとするDoumaticシリーズは、ボタンを押すだけで、開くだけでなく、閉じることもできる。コンパクトながら開くと、直径1メートル前後の傘になる実用性の高さも魅力だ。
Knirpsの「X1」も面白い。三つ折りのコンパクトタイプながら8本骨で、ラウンドジッパーのケース入りというのも大きな特徴。ぬれた傘でもこのケースに入れればカバンに収納したり付属のホルダーストラップでカバンに外付けしたりすることが可能。デザインバリエーションが豊富で、かなりポップな柄まで用意されている。
風速31mにも耐えるTOTES
米国のレイングッズメーカーTotes(トーツ)も、折り畳み傘の名門だ。
同社の「TITAN(タイタン)シリーズ」は、骨に軽くて丈夫なスーパーストロングアルミニウムを使い、同社の実験では秒速31メートルの風にも耐えるという。ワンボタンでの開閉、握りやすいグリップなど、基本性能も高い。開いたときの直径が124センチメートルにもなるタイプもあり、用途によって様々なタイプが選べるのも魅力だ。
Totesの折り畳み傘で面白いのは、傘の中に回り込んだ風を、上部から抜く構造を持つ「Vented Canopy(ベンテッドキャノピー)」シリーズ。ダブルキャノピー式とも呼ばれるこの方式は、傘の上部が二重になっていて、強風時には上部の傘が持ち上がり、その隙間から風を逃がすというもの。
この方式は、強風時にはかなり有効で、ほとんど傘がひっくり返ることがない。傘の上部が開くので、風が強い場合、多少の雨が降り込むのだが、強風時に雨に当たらずにすむ傘はないのだから、大きな欠点ではないともいえる。
骨の先端が隠れたBLUNT
風対策にこだわった傘としては、BLUNT(ブラント)も面白い。骨の端が外に露出せず、先端が丸くなった独特のデザインが特徴。傘の中に入った風を、可動式の骨と骨の先端のポケットを使って力を分散させて逃がす構造は、風が強いほど、傘が軽く感じる。
長傘が基本のブランドだが、「XS_METRO(エックスエスメトロ)」という折り畳み傘のラインアップもある。折り畳み傘は、通常の物に比べ、畳んだ状態でもやや長いのだが、畳む際にワンアクションで完全に畳める構造は使いやすい。
今回取り上げた製品は5000円以上の高価なタイプ。本格的な風対策が施され、大人が使えるサイズ、高いはっ水品質をもち、壊れにくいものばかりだ。夏のゲリラ豪雨などを考えると、雨が降るたびにコンビニでビニール傘を買うよりも安上がりだろう。
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(文具ライター 納富廉邦)
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