1873年(明治6年)に禁教令が解かれると、やがて各地に教会が建てられました。それらの教会群がこの世界遺産の重要な要素となっています。のどかな漁村の中に立つ教会のたたずまいは、つらい歴史があっただけに、どこかほっと和ませてくれる風景です。

世界遺産に登録されたことで、特に韓国からの旅行者が増えるのではないかとシャウエッカーは予想しています。「九州は基本的に韓国からの観光客が多い地域。しかも日本のキリスト教関連の観光地は韓国からの観光客に人気があります」
五島列島は平安時代の昔も、遣唐使が船を出すために風待ちをした最後の寄泊地だったという歴史があります。あの空海も最澄も、港があった五島の福江島から遣唐使船に乗って海を渡りました。島内には関連する碑もいくつか建てられています。
「潜伏キリシタンの関連遺産の他にも、五島列島は自然がすばらしくて、町も魅力があり、食べ物もおいしい。弘法大師の歴史もありますし、面白い旅行先です」(シャウエッカー)
聖なる島…沖ノ島(福岡県)
「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の中心となる沖ノ島は、日本列島と朝鮮半島および中国大陸の間に位置し、4~9世紀に航海の安全を祈る古代祭祀(さいし)が行われた場所でした。古くから宗像三女神が信仰され、三女神をお祭りしたのが、本土にある辺津宮、沖合11キロメートルの大島にある中津宮、さらに49キロメートル沖の沖津宮(沖ノ島)でした。この三宮の総称が「宗像大社」です。

沖ノ島は、島そのものがご神体ですので、神職の人だけが立ち入ることができ、一般の人は上陸を禁じられています。そのため、大島の北側、沖ノ島が見える場所に、ご神体を拝むための沖津宮遥拝(ようはい)所が設けられました。観光客はこの遥拝所までは行くことができます。晴れた日にははるか遠く、水平線上に沖ノ島を望むことができます。

外国人観光客の動向については、まだ未知数とのこと。上陸できない「神宿る島」を遥拝するために訪れる大島までの旅は、他の島旅とは一味違った体験になるはず。そのスピリチュアルな雰囲気が伝わると、関心を持つ人が増えてくるかもしれません。
日本初の世界遺産…屋久島
日本で最初に登録された世界遺産にも島が入っています。1993年、姫路城・法隆寺・白神山地と共に登録されたのが屋久島。島全体が一つの山のような形で、最高峰の宮之浦岳は1936メートル。海からの高低差は降水量の多い特殊な気候をもたらし、その結果、屋久島特有の豊かな自然が育まれました。
中でも有名なのが屋久杉です。推定樹齢3000年ともいわれる縄文杉をはじめ、名前が付けられた名木が何本もあり、それらを見るトレッキングコースが観光のハイライトとなっています。また、屋久シカや屋久ザルなど固有の野生動物が生息し、海岸はアカウミガメの産卵地としても知られています。

外国人にもたいへんな人気で、行ってみたいという人、既に訪れた人は多いです。他に類を見ない特別な自然が残る島という存在は、外国人観光客たちの興味を引きつけていますし、往復で約10時間かかる縄文杉までのトレッキングも、その行きづらさが逆に魅力と感じているようです。海外でも有名なスタジオジブリのアニメ「もののけ姫」の舞台のモデルになった、コケに覆われた森があることも知られており、それも人気の理由の一つでしょう。